そのままの君で
光がのろのろと家に帰ると、もう外は暗くなりかけていた。
真面目な幸太郎と違って、テスト前でもなければ勉強なんてそうそうしないから、着替えてベッドに倒れこむ。
勉強なんてしなくても、かなりいい成績をキープしているのだから別にいいじゃないかと光は思っている。
しかし、そう公言していることが『顔はいいけど、性格がいまいち』と評されるきっかけとなったことを知らぬのは本人ばかりである。
鞄から携帯を出してみると、着信もメールもなし。
なんだよ、いつもこうじゃんか・・・。
幸太郎とは、もともと光の一目ぼれから始まった関係。
だからか、メールも電話も光からが圧倒的に多い。
それに、お互い一人暮らしでもないし、ホテル行く金もなんてないしで、キス以上のことはしたことがない。
そのキスだって、光がせがんでしてもらうというものだった。
何も受信しない携帯電話を投げて、枕に顔をうずめる。
「もー・・やだ・・・」
電話やメールをあまりして来なくても、会えばずっと幸太郎は優しかった。
でも、最近は冷たい態度をとられることも多い。
それに、前はすぐに返してくれていたメールの返事が遅くなったとも思う。
1時間以上待たされることなんてしょっちゅうで、夕方に送ったメールが深夜に帰ってくることも珍しくない。
「なんで、俺ばっかり・・・」
こんなに頑張ってるのか。
でも、それくらいはよかった。幸太郎に好きでいてもらえるなら。
でも、もう好きでいてもらえている自信がない。
自信がないのに頑張り続けるのは、つらい。
飽きられたのかなあ。
今まで考えないようにしてきたことだけれど・・・もう限界だった。
そもそも、初対面で告白をオッケーしたということは、そのときの判断材料は顔しかないはずだ。
光は『顔はいいのに、性格はいまいち』という評価を下されること多数。
幸太郎はどっちも満点。
光が幸太郎のことをどんどん好きになるのに対して、幸太郎からみた光の印象がどんどん悪くなっていったということも考えられる。
顔だけで1年なら、よく持ったほうかも・・・。
このギスギスした性格も、幸太郎には見せまいと努力したけれど、努力した結果がこれならば仕方がない。
もう、二人で歩くべき先の道はないのかもしれない。
作品名:そのままの君で 作家名:律姫 -ritsuki-