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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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僕らが外に出てからすでに1時間以上経過していた。
「もう、ももちゃんが野良猫相手なんかに無駄に遊んでるせいでこんな時間になっちゃったじゃないか」
手足が冷たくてしょうがない。
「だってなかなか当たんないんだもん」
「基本的にノーコンなくせに意地はるからだよ」
「むー、今度は当ててみせる」
そう言ってむくれるももちゃん。
ちなみにももちゃんが野良猫相手に遊んでいた遊びとは、簡単言えば的当てゲーム。
ルールは簡単。
プレーヤーはその辺に落ちている石を拾い、それを歩いている猫に当てるだけ。
小さな石ほど点数は高いぞ。
……………………まっ。
なんて言っても動物虐待。
細かく言えば猫科虐待。
おかげで周辺の石ころが辺りに散らばりまくってしまった。
猫は………、まぁ、おいといていいだろう。
凄まじくすばしっこかったからなぁ。
どうでもいいことこの上ないことだけど。
とりあえず人には見られてないし、万事オッケーだ。
例えバレても…。
まぁきっと大した問題でもないだろう。
僕はそう、適当に決めとくことにした。
「あっ」
僕らが玄関から入り居間に向かおうとした時、ももちゃんが声を上げる。
僕がその声につられて顔を上げると、そこには1人の男がいた。
「おはよー、かっちゃん」
「おぃーす」
ももちゃんの挨拶に、かつくんは軽い調子で返す。
かっちゃんは、背が高くてなかなか体格もよく、前髪も後ろ髪つんつん立っているが、襟足だけが微妙に長めで後ろに降りており、快活そうな表情で笑っている。
「よー、こーくん。いつものか?」
かつくんが、僕に話しかけてくる。
「うん、そんなとこ」
僕はそれに答える。
「お疲れさん」
「そうでもないよ。それよりもかつくん」
「なんだ?」
「名前、ちゃんづけでもいいの?」
「は?、別にいいよ。かわいいじゃん」
かわいいらしかった。
それも平然と言いやがった。
でもそれが僕には耐えられないだよ。
そこんとこよろしく、ももちゃん。
「みみちゃーん。ご飯出来たー?」
僕とかつくんが話していると、ももちゃんは奥にあるキッチンにいるみみさんに向かって声をあげていた。
「もうちょっと。だから待っててもも」
その声に、みみさんは振り返らず答える。
みみさんは、女性にしては背が高く、スラッとしていているが出ているところは出ているといったまぁなんというかって感じのスタイルしていて、髪の毛はももちゃんよりも短めで、でも男っぽいというわけでもなく軽いウェーブのかかった栗色の髪をしている。
その表情はでも、どうにも能面のよういうか、無表情というか。
研ぎ澄まされた雰囲気を、全開で醸し出している。
…………まぁ今なら分かるけど。
あれはただ、ポーカーフェイスなだけだ。
でも、感情が表情に出るのを嫌っているのか、苦手なだけなのか。
または、その両方か。
はたまた全く別の理由か。
なんでそうなのかは予想はつくけど。
理由の方はまだ、僕には分からない。
ちなみに、かつくんとみみさんは僕より一つ年上だ。
「何作ってるの?」
何となく僕は聞く。
「アメリカンな感じよ」
どんな感じか非常に気になる。
「ふーん…………。それよりもみみさん」
僕は、みみさんに話しかける。
「何かしら?」
振り返って無表情に僕を見るみみさん。
「紅葉、まだ寝てた?」
「ええ、それはもうぐっすりとね」
「…………………………」
予想通りというか、何というか。
いつも通り、だな。
「何度か起こそうとしたんだけど、やっぱり私じゃ無理みたいなの。いい加減あなたが起こしに行ったほうがいいんじゃないかしら?」
「そうするよ。で、ももちゃんはどうする?。2階行って着替える?」
「うーん………」
悩むももちゃん。
そして首を振る。
「いい。ご飯食べてからにする」
食欲に負けたようだ。
うむ、僕としては大変結構。
乙女な16才はそれぐらいが丁度いいわけでもないが、好みではある。
「遅かったら先に食べるてるから」
「はーい」
僕は返事をして、居間の扉を開け、廊下に出る。
「……………………さて、と」
そして、と言いながら、僕が2階へと向かおうとすると、がしっと肩を掴まれた。
僕は手で持たれた方向に、首だけを回してみようとする。
「やぁ」
そこにはなぜか、料理中だったはずなのに僕の肩を持っているみみさんがいた。
「……………痛いけど古い手だね」
僕はそう言いながら、頬に突き刺さったみみさんの指をどける。
その悪戯だけをみれば、まぁたわいもないお巫山戯なんだけど。
みみさんの爪、長めだから当たると痛いんだよ。
それも磨いてあるから先っぽのほう尖ってるし。
「確かにそうよね」
みみさんは僕の言葉に頷く。
「分かってるならもうちょっと新しい手段を考えようよ」
「?、悪戯はしてもいいの?」
ポーカーフェイスだけどみみさん、不思議そうに僕に聞いてくる。
そしてそれに、僕はこう答えた。
「限度とユーモアがあるなら」
基本的に僕は何でもオッケーだ。
「なるほどね。相変わらず受け身なんだ。」
「そうかもしれないけど、それだと僕がマゾみたいだからやめてくれ」
「じゃあ、いじられ体質なの?」
「別に僕はそんなに他人からなじられたことはないけど」
「なら、いじめられ体質?」
「それなら僕は不登校になってるよ」
そしてその内、遺書とか書いて飛び降りることになりそうだ。
これでも皆勤賞もではいかないものの、そこそこ真面目に学校には行ってる。
まっ、虐められている光景は見たこともあるけど、僕自身が虐められたことは幸運にも1度もない。
別段どうでもいいことだ。
「それで、結局なんの用なの?」
僕は話題を戻す。
「ええ。今朝のことなんだけどね」
「うん。」
「本当にいつものだけなの?」
「ん?」
「いかがわしい事、してなかったの?」
みみさんが、僕の表情を覗き込むように言ってくる。
だけどまったく身に覚えがありません。
何度でも言おうじゃないか。
それでも僕は………いや、なんでもないです。
「してないよそんなこと。そんな余裕もないし、僕にはそんな度胸もないね」
「そうなの?。でもあなたの体からももの匂いがするのだけれど」
……………………。
まぁ、ねぇ。
確かに接触はしたけど。
特にみみさんは僕に近づいた訳じゃないが、その匂いが分かってしまったらしい。
相変わらず鼻がいいなぁ。
「別にそんなことじゃないよ。ちょっと馬乗りに…」
「馬乗り?、それは騎乗位?。ももは過激ねぇ。」
出来れば女性が堂々とそんな事を口走らないで欲しい。
結構美人なんだから、みみさん。
「違うよ。ちょっと組み伏せられただけ」
「ふーん。じゃあ道路でやってたことは?」
「道路で?」
「ええ。たぶんあの足音はももだったと思うけれど。あなた達、その辺の野良猫虐めてたんでしょ」
「見てたの?」
「私たちの部屋からだと見えないわ。聞こえただけよ」
おお。
相変わらず耳もいいなぁ。
みみさん、音だけで僕らが何をやっていたのか分かったみたいだ。
さっすが。
「動物虐待は止めときなさいよ、かわいそうじゃない。それに近所の人に怒られるのも勘弁したいわ。」
「ふーん。どっちが本音?」
「もちろん後者よ」
なるほど、猫はどうでもいいわけか。