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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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誰が声をかけても修まらず、嗚咽をもらし、顔を放送ギリギリぐらいまでに歪め、真っ直ぐに泣いていた。
それは、木沢が死んだ理由を知った後でも。
美島は、木沢の席を見るたびに泣いていた。
そして、声をかけていた人が諦め、誰もが自然に泣きやむの待とうと我関せずを決めかけてたころ。
何となくなく僕は、目の前で揺れる美島のポニーテールを、引っ張ってみた。
特に理由もなく、前みたいに欲求的に。
すると美島は、「ひゅっ」だか「ひぇっ」だか声をあげて、僕の方を向く。
うーむ、泣きっ面に蜂をさしてしまったかと僕は身構えたりしないけど。
美島が、泣きながら、口を開く。
「なっ、なにぃ、するっぅ、こぅ、くんっ」
ずぃぃ、と鼻水をすする美島さん。
そんなもうギリギリ越えてんじゃね?、というお顔をしている美島に、僕は相変わらずの思いつきを口にしてみた。
「すごいね、美島は」
「ふぇっ?」
「友達のためにそこまで泣けるなんて」
僕には永久に出来そうにないことだ。
別に羨ましくもないけど。
涙腺の機能の仕方は、どうだったけなぁって感じだし。
ともかく、僕のそんな感想に、美島は真っ赤になってる目で僕を見る。
「ぁ、うぐ、あた、り、りっ・・・ひゅ、ぃ、ぁ、・・・・・・あたりっ、まえ、」
だのくらったかーとか言いたくなったけどぐっと抑えた。
たまには空気を読んでみようとか気まぐれを働かせて。
美島はがんばって、嗚咽を制御しようとして失敗して、でも、言う。
「ともだちぃっ、なん、だからぁ・・・、だからっ、ぐ、ぅ、・・・・・・いなく、なったらぁ、ぅ、ぅ・・・かなっ、しいよぉっ」
もう1度鼻をすする美島。
演技じゃない何かが、そこにあるのかな、と。
心のなかで詩的に言える自分がいたらいいなぁ、とかなんとか。
よし。せっかくだから、社交辞令的ななものでも言わないとな。
「羨ましいね、木沢は」
「ぅ、ぅん?」
「そんなに泣いてくれる友達がいて」
此処までしてくれたら、お空の上の木沢さんも本望だろう。
とか思ってたら。
木沢が、後ろのポニーテールと一緒に、大きく首を振った。
「なっ、なに、ぃ、いってるっ」
「うん?」
「こうくんがぁっ、もしっ、もしもっ、いなくなっても、・・・なってもぉっ」
美島は。
「わた、しはっ、わたしはぁっ・・・なく、よぉ」
そう、言った。
泣くにきまってるよ、と。
当たり前だよ、と。
当然の事のように、そう言った。
それは、僕にとって少し新鮮で。
せっかくなので、それの御礼の意味を込めたり込めた無かったり分からないけど。
僕は言う。
「そっかぁ。それじゃあ美島」
「ぅん」
「君に、僕の友達」
第1号の。
「栄誉賞を挙げるよ」
「ど、どういう、ことっ?」
「別に、深い意味は無いよ」
口から出任せみたいなかんじだし。
「ただ僕は」
でも言い始めてしまったので、最後まではいっておこう。
「出来るだけ美島が泣かないように努力しようかなぁ、てね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅぐ」
あれぇ?。
なんでだろう?。
僕は思わず首を傾げたくなった。
気まぐれの言葉だし、いつもの空虚な言葉なんだけど。
ただの軽口のつもりだったんだけど。
美島は、思いっ切り首をがくがく前に振って。
「そ、そっか、・・・・・・ぅ、ん、・・・、こぅくん、ありぃ、ありがっ、とぅ」
と、なぜかお礼まで言われ。
それで、美島は。
少しだけ。
笑った。
さっきよりも泣きながら、でもなぜか、ちょっと嬉しそうに。
うむうむ。
女の子は分からんねぇまったく。
はい、カット。そこまでね。
ともかく美島は、どうにかこうにか復帰したみたいだ。
今は電波に乗せてもまったく問題ない顔をしている。
「でもな、こうくん」
「ん?」
真面目より軽めな顔した美島は、木沢の席から目を離して、僕の方を向いて言う。
「すっごく悲しいけど、すっごく辛いけど。でも、すっごく寂しくはないんだ」
「なんで?」
僕の疑問に、木沢は含み笑いをする。
何がそんなに楽しいのか分からないくらいに。
楽しそうに。
そして。
「秘密だ」
そう言った。
「秘密ですか」
「そうだとも。何と言っても重役出勤の似合う女に成らなければいけないからな。ちょっとくらいミステリアスのほうがいいのさ」
「その前に赤点のミステリーが無くなるといいね」
「むむっ」
顔をしかめる美島。
僕はその顔を観賞しながら、ついでにお空を眺めてみる。
ふむふむ。
いい天気だ。良かったね。誰にって感じだけど。
ではでは、そろそろ朝のHR(ホームランじゃないぞ)が始まるので。
最後の回想、いってみよー。
日時的には昨日の、つまりは日曜日の午後5時半くらいか。
僕は学校で出された宿題を終え、2階から階段を使ってというか階段しかないんだけど。
ともかく1階に向かっていた。
今現在、この家の人工密度はいつもの5分の2ぐらい。
なぜなら、ももちゃんはみみさんと買い物に行ってて、かつくんはバイクの点検をしに行っているから。
なので今この家にいるの紅葉と僕だけなのです。
2人きりなのです、うむうむ。
強調して言ってみたけど特に何があるわけでもない。
「ん?」
一階に向かう僕の耳に、小気味の良い音が聞こえてきた。
うん?、えーと。
・・・・・・・・・・・・あ、そうか。
今日は、そっか、日曜日だから、ほほぉ。
紅葉が夕飯を作る日か。
うむうむ。そうなのだ。
ももちゃんやみみさんはほとんど毎日のように料理を作るけど、実は紅葉も料理を作れる。
ただし、その頻度は1ヶ月に平均4回。
毎週日曜日の夕飯だけ。
理由としては単純に、紅葉が面倒くさがってるってのが1番だ。
まぁ別にそれで何か困ってる訳でもないし、ももちゃんやみみさんも料理自体が結構好きっぽいから特に問題もない。
「・・・・・・おっ」
一階につくと、リビングの方からいい匂いが漂ってきた。
さぁみんな、連想ゲームだぜ。
紅葉の得意料理はなーんだ?
ヒントも何も見たまんまでいいぜ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はーい、しゅーりょー。
答えーは、いえーじゃなかった。
超本格派の和食っすよ。
フグとかも捌きますよ、免許持ってないけど。
うむ。
でも最近の紅葉、不機嫌だったからなぁ。
この間なんて紅葉がとっておいた雪見大福かつくんが食べちゃって、そのとばっちりでなぜか僕が殴られたし。
下手したら全員ししゃも一本とかもありえるかもしれない。
まっ、その時はその時だけど。
僕はそんなことをうらうらと考えつつ、いつものように特に何も考えず、リビングに入っていく。
途端に強くなった何かしらの料理のにおい。
僕は生理的にそのにおいにつられつつ、キッチンで料理する紅葉に視線を向けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。