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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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「大活躍ですよ」
「はっはっはっ、減らない口にチャックでもしたい気分ですよ」
「そいつわ困った。僕にはまだ幼なじみなあの子のお弁当を食べるという命題が」
「それはそれは。少々分けてもらえますかね?」
「失礼、もう腹の中でした」
「それは残念」
「社交辞令をどうも」
「いえいえ。あ、一言いいですか?」
「どうぞ」
「あなた、友達少ないでしょう」
「ええ、少数精鋭。美少女率高めです」
「羨ましいですねえ」
「そうでしょう。僕は両腕収まるぐらいが丁度いいんです」
「寂しいですねえ」
「そんなことはないですよ。もうお腹一杯ぐらいです」
「そうですか。・・・・・それにしてもどうしてでしょうねえ?」
「何がです?」
「あなたとお話しているとどうにもこうにも、脱力するというか気が抜けていくとでも言いますか」
「癒し系の素質あり、みたいな感じですか」
「いえ。どちらかといえば無気力作用系とでも言ったほうがいいかもしれませんねえ」
「何だか超能力者みたいすね、それ」
「あっははっ。・・・・・・そうですねえ、そろそろ帰るので最後にもう一言言っておきましょうか」
「では2度と会わなくてすむくらいどうぞ」
「僕達は、あなたが犯人だと思ってました」
「はっきりくっきり言いますね」
「くっきりはっきり言っても良い相手だと思ったもので」
「そうでしょうねぇ」
「ええ」
「その思いこみはどこから生まれたんでしょうか?」
「長年の経験とか勘とか、あと諸々の情報によって」
「随分曖昧ですね」
「君も充分そうですよ」
「それはそれは、ありがとうございます」
「別に褒めていません」
「社交辞令の真似事ですよ」
「そうですか。では、僕達はこれにて」
「はいはい、お元気で」
「そちらこそ。またどこかで」
「さようなら」
というような粘っこい感じでした。
そういえば結局、阿東さんの方は一言も喋らなかったなぁ。
どうでもいいけど。
なぜかあの人達はまたどこかでエンカウントしそうな予感がしてならない。
僕としてはその時までに必殺技の1つでも会得して唐木さんのコークスクリュースナイパーショットに対抗できるようにしないとな。もちろん冗談だけど。
ああ、後。
木沢梨沙が最後に残したモノ。
一つ目は凶器。ギリシャとかにいそうな生首ね。
んで、2つ目はっていうか、これはどうなんだろうな?。とにかく並べて揃えてあった一足の靴。
木沢さんは優秀だったからなぁ。靴もちゃんと揃えて置いてあったらしい。最後まで優等生の鏡を貫きましたとさ。
それから3つ目。
彼女が、今回の事件の全容とその他心の叫び的なものを書き連ねた文章。
いわゆる、遺書というものだ。
これを元に警察は色々調査し、結局遺書のままを結論として落ちついた。
動機については衝動的なものと書いてあったらしく、それ以外の理由を探すことも不可能だったので、これもそのまま。
そして、その中の最後の一文。
これだけは警察も、そして誰も、意味を理解するまでにいたらなかった。
彼女が残した、最後の1文。
ありがとう。
という一言。
これが誰に対するモノだったのか。
僕自身も、考えてもいないので分からない。
それに、どうでもいいから。
だからこの一文は、死体に口なしと言うとおりのごとく、彼女だけがその意味を胸に秘めてお空へと昇っていったわけだ。もしくは落ちていったか。
それと隠し情報というかそういうので、本当はこれが最後の1文じゃなかったのかもしれないということ。
ページの最後の最後に、ボールペンでぐりぐりっと塗りつぶされた箇所があったらしいが、別に興味もないし。
彼女はもう、終わってしまったんだから。
だから僕は、続いてる人に話しかけてみる。
「茉矢木くん」
「なに?」
茉矢木くんが、机から僕に興味を向ける。
「ごめんね」
邪魔しちゃって。
「・・・・・・何のこと?」
茉矢木くんが、怪訝そうに表皮を変化させる。
「うんん、何でもないよ」
「・・・・・・・・・・・・」
茉矢木くんは、僕の言葉に答えずに、そのまま自分の席へと向かっていく。
遠ざかるその背中に、僕は特に何も感じない。
木沢梨沙のストーカーは、そうして自分の席へとついた。
自分の意中の人間を失い、でもそれをあまり表へと出さずに。
そうそう。
僕があの時ついた嘘には、もう一つの目的があった。
それは、茉矢木武将が木沢梨沙に接触する場所を限定するということ。
たぶんだけど。
茉矢木くんは、木沢が2つ目の犯行をしている現場を見ていたんじゃないかと思う。
だけど彼女を庇って、代わりに次にその場に来た紅葉の時に悲鳴を演出した。
紅葉が、犯人だと思わせるために。嘘の証言までして。
そしてそれを、木沢が犯行をしたのを隠す意味も含めて。
木沢自身に、その協力を持ちかけようとした。
僕は、茉矢木くんがそういう意志を持っているかなぁとか思ったので、そうなったら色々面倒だし、お邪魔させていただくことにしたのだ。
そのために布石として、嘘を用意して。
悪意の拡散を、防ぐ意味も含めて。
「まぁ、今となっちゃあどうでもいいことなんだけどね」
と僕は回想1について締めくくる。
ついでに、今しがた登校してきたクラスメイトに対して、挨拶してみることにした。
「おはよう美島」
「おはようだ、こうくん」
美島菜月は、快活までいかなくとも笑いながら僕に返事をする。
そして、僕の隣の席を見て、一瞬表情に影がさして、それを僕に隠して、何故か急いで自分の席についた。
「今日は少し遅い登校だね」
「ふっふっふっ、私は重役出勤が似合う女の目指しているのだよこうくん」
「じゃあその地位を揺るがぬモノにするためにもう1時間ほど遅れて登校するといいよ」
「だけど私はこれでも武術を嗜む人間だ。規律規則というモノに対しては厳格に挑まなければいけない」
「なるほど、つまりこれからは赤点なんて2度ととらないと言うことだね。こうくん感心感心だ」
「あ、当たり前だ。これでも毎日何かを積み重ねるということに関してはお手の物だぞ」「そっかぁ。じゃあその指のたこが潰れるころには成績もあがってるといいね」
「それは嫌みなのか?」
「そんなつもりはないけど、美島にはそう聞こえてしまう理由でもあったのかな?」
「む・・・・・・、今日のこうくんはなんか意地悪だ」
「そう思えてしまう理由は美島にあるんじゃないかな?」
「今日のこうくんは何か嫌いだ」
「それじゃあ明日は好きになってもらえるように努力するよ」
「精進せい」
「出来る限りね」
そして、今日の僕は意地悪らしいので。
何となく、意地悪してみることにした。
「美島」
「ん、なんだこうくん?」
「まだ、悲しい?」
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙する美島。
そして、少しして、小さく頷く。
「うん。・・・・・・やっぱり、例え梨沙が何をやったんだとしても、友達だから」
「そう」
過去形じゃないんだ、まだ。
「死んでしまって、2度と会えないのは、きっと、・・・・・・ずっと、悲しい、かな」
そう言って、僕の隣の席を見る美島。
その瞳に、憂いを灯して。
はーい、回想第2弾。
木沢が死んだと聞かされた日。
美島は、人目を憚らずに、教室で泣いていた。