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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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<19章=いみ>





校門からで出た僕を迎えたのは、緩めの膝丈ぐらいのパンツに、こっちもサイズの緩めのティーシャツといったいつもの風呂上がりスタイルの紅葉だった。
ついでに素足にももちゃんのクロックスを履いている。
それと髪の毛が、若干、濡れている。
吐く息は荒く、たぶん此処まで、走ってきたんだろうなぁ。
それよりも僕が気にするのはというか、うむ。
たぶん紅葉は今、服の下に下着を付けていないだろうということだ。
紅葉はいつも、お風呂から出ると下着を着ないのです。
なのでとっても寒そうなのです、と。
僕がここまで考えたところで。
いきなり。
紅葉に。
左頬を、おもいっきり。
殴られた。
「・・・・・・・・・・・・」
息を荒くしたままの紅葉は、肩を上下させながら。
いつもより不機嫌そうに、僕を睨む。
そんな紅葉に、僕は話しかける。
「迎えに来てくれたんだ、ありが」
とうを言う前に、今度は右頬を。
そして紅葉は振り抜いた手を、ゆっくりと、したに降ろした。
「コウ」
紅葉が、口を開く。
「終わったの?」
「うん」
紅葉の言葉に、僕は頷く。
「終わらせたの?」
「うん」
「殺したの?」
「うん」
「もう、これは、誰も死なない?」
「うん」
「誰も殺されない?」
「うん」
「なんで、こうなったの?」
紅葉は、無表情に、僕に聞く。
「どうして、死んだの?。」
「・・・・・・」
「また、私のせい?」
「・・・・・・」
「私が、振りまいたせい?」
「・・・・・・」
「私が、ここにいるせい?」
「・・・・・・」
「私が、存在しているせい?」
「・・・・・・」
「私が、生まれたせい?」
「・・・・・・」
「コウ、私は」
紅葉の言葉に、僕は答える。
いつものように、いつも通りに。
変わらず、何も考えず。
空っぽの僕は、空虚な言葉を口にする。
「いいんだよ、紅葉」
僕は言う。
「いいんだよ。いつでもいいんだ。迷わなくていい。迷う必要もない」
この言葉は、もう何度目か。
「紅葉が願ったら。紅葉が焦がれたら。紅葉が求めたら。紅葉が成りたいのなら」
僕が紡ぐのは。
「本当に、いつでもいいんだよ。紅葉がそう思ったのならいつでも」
繰り返し繰り返し。
「どこでも、どんな時でも、」
僕は、滑稽な言葉を、口にする。
「紅葉は、僕を殺せばいいんだ」
それは、別に僕の願いではない。
僕自身が願っている訳でもないし、もちろん望んでいるわけでもない。
でも僕は、きっとそれを受け入れる。
紅葉がそれを行うとき、僕はたぶん間違いなくきっと。
自信は、関係ないか。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
見つめ合う2人とナレーション。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
紅葉が、不機嫌そうに、僕を睨む。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・寒い」
そして、そう言って、自分の二の腕当たりを軽くさする。
なので僕は男らしく、さらにはきざったらしい青春男児になってみることした。
「そんな薄着で外に出るからだよ」
そう言いながら僕は、上着を脱ぎ、紅葉の肩にかけたりする。
・・・・・・・・・・・・うむうむ。
なぜだろう?。
無性に頭を掻きむしりたくなった。
やっぱり慣れないことはしなほうがいいなと。
別に、後悔はないけど。
「ふん」
紅葉は鼻を鳴らして、僕の上着に袖を通す。
それを見ていたら今度は僕の方が少し寒くなってきた。
でもしょうがない、僕はこれでも紳士なのだ。
しょうもない冗談だけど。
「紅葉」
「なに?」
「帰ろうか」
僕の提案に、紅葉は憤慨した。
「当たり前だっ、こんな寒いところにいつまでもいれるか馬鹿っ!。コウのせいで霜焼けでも出来たらどうするんだこの愚図!」
「ごめんごめんごめんなさい」
素直に謝る僕。
「さっさと行くぞっ!」
そう言って、歩き出す紅葉。
その手に、僕の服の袖を掴んで。
なので僕は、引っ張れるように進み出す。
暗い外灯の道を、でも目懲らす必要はないんだけど。
特に何も話さず、道を歩く。
2人で並んで。
でも僕はずっと、紅葉を袖を持たれたままだけど。
歩きながら、少し僕は考える。
どうして、2人目の死体の場所に紅葉がいたのか。
それに対する答えは、まぁ、何となくなんですけど。
引き寄せられたんじゃないかなぁ、と僕は思う。
良くも悪くも、うーん、良くはないか。とにかく理屈も何もなくて、そんな感じなんだろうと決めておく。
そして、そのまましばらく歩いて、僕らの家に、到着。
玄関を開けて、静かに中に入る。
「どうする?、紅葉」
僕は玄関の鍵を閉めながら紅葉に聞く。
「今日は、もう寝る」
「そっか」
「うん」
僕は紅葉の答えに頷き、2階に上がる階段を転ばないように紅葉の後ろを付いていく。
2階に到着。
紅葉は僕の部屋の正面の部屋に入る。
僕も一緒に。
そして紅葉は、着ていた服を全て脱いで、一旦裸になって、それからいつもようにキャミソールを一枚だけ羽織る。
「・・・・・・」
紅葉は、簡素な布団を捲り、中に入る。
「・・・・・・コウ」
「うん」
紅葉に呼ばれたので、僕は紅葉の布団に腰掛ける。
すると、紅葉は布団の中から片手を出し、僕の方へとのばした。
そして、僕はそれに応え、絡めるように、その手を握る。
いつも通りの、夜の、習慣。
儀式のように続く、毎夜の出来事。
紅葉の手は、氷のように冷たくて、今にも溶けてしまいそうで。
僕は、そんな手を握りながら。
闇へと落ちていく紅葉を、見送ることにした。
「おやすみ、紅葉」
「おやすみ、コウ」
紅葉が、まぶたを閉じる。
まるで人形のように、動かなくなる。
生きた死者のような、死んだ生者のような。
そんな紅葉を見ながら。
しばらくの間、僕は紅葉の手を握り続けた。
せめて、いい夢が見られるようにと。
願う自分がいることを、夢見ながら。






<20章=ふらーい>






準備は出来た。
躊躇いも、悔いも、何一つない。
第一目標は無理だったけど。
第2希望が叶ったので良しとする。
行き当たりばったりで、無秩序でしょうがない行為だったけど。
人の命を奪うという、大それた行為だったけど。
終わってみれば、あっけない。
行為を行っている最中にあったあの高揚感も、胸の高鳴りも。
今はこんなにも静かで、何もない。
すっぽりと抜けてしまったようだ。
まるで受験を終えた次の日のような、ん?、例えが軽いか?。
別にいいか、そんなこと。
今、自分の、私の心の中にあるのは。
小さな、喪失感と。
芽生え始めた、罪悪感。
喪失感の方は、まぁ、何と言いますか。
失恋と定義していいでしょう、と私は思いますです。
・・・・・・えへ。
人生初めての失恋。
でもなぜか、初めから結果が分かっていたような気がして、それほどショックではない。
自分では、彼の特別になれないと心のどこかで理解していたから、少しの喪失感だけで、済んだ。
でも、なぜだろう?。
行為を終え。
彼に暴かれ、説かされた時から。
それまであった奇妙な高揚感が、まるで、やったことはないがドラッグでも服用しているかのような心の状態が、急速に平常へと回帰していく。