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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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今ここで僕をそこに入れてと言ったらどうなるだろうかと考えたりしないよ。
「その時さ、木沢。僕と薙さんとやらが一緒に帰ったのを見たことがあるって言ったよね?」
「言ったね」
「いつ見たんだっけ?」
「何の話し?」
「ただの戯れだよ。いつ見たの?」
「だから、昨日の昨日で。つまりは、一昨日に」
「どこで見たの?」
「だからっ、校門から一緒に帰っているのたまたま、・・・・・・っ」
木沢の顔が、引きつった。
「そうだよね。おかしいよね。あの日木沢が僕らを見れる筈がないんだ。だってあの日は僕ら、反対側の門から出たんだから」
「・・・・・・」
「木沢はいつも美島と東の門から出てるんだよね?、美島も言ってたし。なのになんで僕らが西の門から出てくるのを知っているのかな?、普通教室廉と逆の方向にある特別教室廉側にある門から僕らが出ていったのを。あの日は部活も無かったよね?。木沢はなんで特別教室廉にいたのかな?」
「・・・・・・そ、それは」
「また今日みたいに忘れ物?それとも見間違い?・・・・・・うん。そうだねぇ、そうかもしれない」
「・・・・・・」
「うんうん。そういえば木沢」
「・・・・・・なに?」
だんだん、美島の言葉が素っ気なくなってきた。
寂しいなぁ、なぁーんて。
「随分どうどうと証拠を隠滅してたよね?」
「なんのこと?」
「今日帰りに僕らと会ったとき、上靴洗ってたよね?。あれ、高桐さんを殴った時についた血を洗い流してたんでしょ?」
「・・・・・・」
「調べれば、まだ、分かるかもねぇ。どうかな?、木沢」
「さっぱり、何の事やらって感じだよ」
「そう。そう言えば木沢」
「まだ何かあるのかな、こうくん」
表情に色が無くなった顔で、僕を見る木沢。
でも、僕にはそれが、笑っているようにみえた。
カラッカラだけど、心の底からの笑み。
僕には一生で無理であろう笑み。
別に、羨ましくもないけど。
「今日は、なんでここに来たのかな?」
「それ、最初にも言ったよね。だから、」
「あ、そうだね。忘れ物だったね」
「そうだよ、それがどうかしたの?」
「取りに来る決心したのはいつだったのかな?」
「?」
「君が、忘れ物を取りに来ようと決心したのはいつだったのかな?」
「こうくん、意味が、ちょっと、」
「木沢」
「・・・・・・なに?」
「僕とね、帰りに話したよね」
「?、うん」
「その時に僕、1つ、嘘をついたんだ」
「嘘?、なんで、そん、な・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
木沢の表情がめまぐるしく変わってゆく。
ぐるぐる、ぐるぐると。
僕の目で追いつけないほどに。
そして、木沢は。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あはは」
笑った。
「あははははははははははははははは」
カラカラと笑った。
まるで、自分自身さえをも否定するような勢いで。
「はははははははははははははははははは、・・・・・・そっか。そっかそっかそっかぁ。そうだったのかぁ」
「うん、そうなんだよ」
僕は頷く。
「あはははは、こうくんは悪い人だなぁ。」
「えっへっへ、それほどでもないよ」
「褒めてないよ。・・・・・・でもそっか、じゃあつまりはそういうことなんだね」
「まあね」
正直、僕も相当遠回りしたわけだけど。
それは決して、彼や彼女のようなものとは違う、何の意味もない遠回り。
演出、なんて言ったら格好いいけど、そんないい物じゃあない。
「つまりは」
木沢は言う。
「こうくんには全部お見通しだったわけだね」
「そうでもないけど」
9割が、自己による保管だから。
「あーあ、そっかぁ。ばれちゃってたのかぁ。見つからないようにしようと思ったんだけど、なるほどなー」
そう言いながら木沢は、胸に抱いていた凶器をゆっくりと離して、片手で持つ。
「回収したまでは良かったと思ってたんだけどね。これだったらいくらでも言い訳が聞くし。こうくんはこれが凶器だっていつ気づいたの?」
「んー、特に理由はないんだけど、強いて言うなら君らの部活の顧問が」
「狩谷先生が?」
「うん。そんな大きな物を出しっぱなしにして、片づけないわけがないだろうなぁと思ったし。ついでに言うと美術室に何かの破片が落ちていて、やっぱりあの先生に限って掃除したときにこんな物を見落とすかなぁとね、別にあの先生じゃなくてもいいんだけどさ。さすがに部員の誰かが捨てるだろうと、それで美術室が最初の殺人の現場じゃないかと思ったわけ」
ぜーんぶ、建前の付け足しだけど。
「随分曖昧なんだね」
「うん、それはしょうがないよ」
だって僕なんだし。
それ以外、取り柄がないんだから。
「それに木沢なら、誰が使っても分からないものより自分で確実に管理できるものを選ぶと思ってね」
「ふーん」
と、木沢は口の端で笑みを作る。
「やっぱり、さすがはこうくんなんだね。私と菜月ちゃんの目に狂いはなかったわけだよ」
「そうでもないよ」
「うんん。初めから私じゃあこうくんの相手になんかなれないってことだったんだよ」
「まあね。僕じゃあ木沢とは釣り合わないだろうし」
僕、かわいい、らしい男の子。
木沢、間違いなくかわいい女の子。
レベルが違うね。
「そうそう木沢」
「なあに?」
「もう1つだけ聞いてもいい?」
「えへへっ。い、い、よ」
木沢はいつもようにはにかみながら、僕を見て頷く。
だから僕は、いつものように、殺すことにした。
「僕は、君にとってそんなにも眩い存在だった?」
「えっ・・・・・・」
木沢が、声を詰まらせて、驚きを表現する。
でも僕は、口を動かせ続けて、さて。
なりきろう、僕は。
「君の俯瞰から見たこの世界が、みんなくだらないモノばかりで。その中で僕はそんなにも輝いていたの?」
「・・・・・・な」
「なんのことだって?、それは君が一番わかってることだろ。この世界はみんなくだらなくてくだらなくてくだらなくてしょうがない。そんなゴミばかり世界に自分はいる。存在させられてしまっている」
「・・・・・・」
「そんなことないだって?。でもそれを、自分で今否定した」
「ち、ちが」
「どうして分かるって?、別にたいしたことはないよ。うん全くたいしたことはない。木沢が僕のことを別格視して、自分のモノにしてしまいたくて、自分をだけのものにしてしまいたくて、そんな理由で僕に害を与えそうな相手を殺したことに比べたらホントに全く大したことはない」
「そうじゃっ」
「僕のために?。僕を邪魔するやつがいたから?。こうくんが困っていたから?。うん、そうだろうねぇ。そう言いたくなるよねぇ。でも君は、今それをも否定した」
「そうじゃないっ」
「ほら、否定した。自分で分かってる。理解している。本当の理由は、他にあるって」
「違うっ!」
木沢は声を張り上げる。
自分の罪を暴かれる時よりも、遙かに必死に。
だからといって、僕の口が、止まるはずが無かった。
「君の世界は、視線は、木沢が思っている以上に高くて、周りの人間が全て、男も女も全て。同じに見えてしまう。自分同様、全てが同じで、等しく、価値がなくて、等しいから、自分も埋もれてしまっていていると。そういう風に思ったわけだ。そしてそれが、人に向ける殺意に対する抵抗力さえも薄くしてしまった」
「っ・・・・・・」