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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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「だって1人目は、警察でさえついさっきまで自殺扱いだったんだから」
「・・・・・・」
口を閉ざす木沢。
「学校に広がっていた話は僕も聞いたよ。でも、それは生徒が1人飛び降りたんだって、言われてるだけで。決して誰も、殺した、なんて言っていないんだよ。そもそも、飛び降りって時点で、普通は殺されたって発想にはいたらないだろ?。それを木沢は、また、殺されたって、帰る時に言ってたよね?、それに今も。どうして?」
「そ、それは・・・・・・その、」
木沢は言う。
「ちょっと、勘違い、してたっていうか、へへっ、そうだよ、勘違いしてたんだよ」
「勘違い?」
「うんっ。勘違いだよ。第一私が殺したって言うならどうやって殺しったっていうの?」「お、答え合わせか。じゃあ言うね」
「ぇ」
木沢が何を言うのを待たずに僕は騙り始める。
「まず僕は一昨日、千種くんに特別教室廉の美術室に呼び出されたわけだ。その日は先生達は会議で全部活は休み。当然、木沢が所属している美術部も。そして僕と千種くんは美術室に入った。彼としては自分本位の話を適当な理由をつけてやりたかったわけだから、あんまり人に聞かれたくない話だったんだよ。そしてそれに、実は木沢も付いてきていた。」「・・・・・・」
「まぁ僕らも勝手に君の部の部室を使った訳だし、立ち聞きされてもどうってこともないけど。それから僕は彼と別れて下駄箱の方に向かっていくわけ。あ、ここで僕と木沢が出会わなかったわけは言った方が良いかな?、単純に特別教室廉の1階の階段横にあった準備室に隠れただけだろうけど。入り方は、木沢が教えてくれたよね?」
「・・・・・・」
「僕が通り過ぎてから木沢は美術室に向かった。そこで、千種くんをぼっこぼこと。捜し物を手伝ってくれとでも頼んで隙を作ってね。木沢みたいな可愛い子の頼みごとだったら大概の男子は聞くだろうし、千種くんも間違いなく。例え彼に他に思い人がいたとしても、それとこれとはまた違う話だから」
「・・・・・・」
男の子は誰しも、可愛い女の子が好きなのです。
僕もしかり。
しょうがないのです。男の性なのです。
そんなものが本当にあるかどうかなんて知らないけど。
経験上、ってわけでもないが。
「そして君は、屋上へと彼を運んだ。木沢は女の子だからね、きっと大変だったでしょ?、人を1人殺して、さらにそれを運んでいくなんて作業は」
階段を引き上げる時なんて、男でもきっと相当大変なことだろう。
労いの言葉は、特に無いけど。
「とにかく木沢は多大な労力を使って彼を屋上へと上げ、さらに羽根のない彼を空へと飛ばしたわけだ。しかもご丁寧に上履きまで脱がせて自殺に見せかけようとして。まっ、最後に自分で墓穴を掘っちゃったわけだけど」
それはきっと、君がまだ普通の人間だから。
僕と違って。
「・・・・・・」
うむ。
それにしても木沢さん、僕が話し始めてから何も言わないな。
傍聴者としては最高の人材だ。
それだったら僕も、好きなように話させてもらおう。
「それから2人目、高桐真梨子さん。こっちは何らかの方法で、木沢が彼女を中庭に呼びだした。きっと僕が彼女に詰め寄られてたのも見てたんだよね。それに彼女を呼びだした内容は、千種くんがどうして死んだのか教えてあげる、ってところだろうね」
彼女の興味と好奇心を最大限に引き出せる内容がそれであろうから。
僕と彼女の会話を聞いていたなら、それぐらい考えなくても分かる。
「そして彼女も撲殺。そこまでは良かったんだけど、そこに、第3者が現れた。君らが言うところの薙さん。」
僕からその名前が出たとき、久しぶりに美島に反応があった。
だけど、口を開くわけでもなく、じっと僕の話を聞いている。
想定通りなので特に気にもならない。
「彼女の登場は木沢にとって想定外だった。だから急いで高桐さんに不意打ちをしかけた場所、またもや登場準備室、ここの窓。そこから中に戻り、そして準備室から出て、また急いで2階にある美術室に何喰わぬ顔で入り、誰かが、おそらくは彼女が悲鳴でも出すのを待つ。同じ部活の生徒は何も不信には思わないだろうね。周りから見れば準備室に行って戻ってきただけなんだから。誰がやっても不思議じゃない。まぁ、予想に反して聞こえてきたのは男の声だったわけなんだけど。別にそれでも問題ないと。後は他の部活の生徒に混じって顔を出せば、いかにもそこにいましたとアピール出来る」
「・・・・・・」
「僕は2階の窓から中庭に出たんだけどね。普通教室廉と特別教室廉はこの辺の地形のせいで高さが違うから、1階の位置がずれているし。別にそれはどうってことないことなんだけど。なんで僕が窓から出入りしたことに気づいたのかと言うと、それは木沢が焦ってくれたおかげなんだ」
と言いつつ別にそんなこともないんだけど。
相手に理解させるには、こっちのがほうがいいから。
「・・・・・・」
「薙さんの登場のせいで、君は焦って大切な隠蔽の行程を1つ忘れてしまったんだ。窓の鍵を閉めて、きっと準備室のドアの鍵もきちんと閉めて。しめに鍵をいつも置いてある場所に隠して。でも1つだけ忘れた。他の部ならともかく、1年も所属した美術部員なら忘れてはいけないこと。駄目だよ、日の光が当たると変色しちゃうんでしょ?、しっかりカーテンは閉めとかないと。」
別に中を見た訳じゃあないけど、日が出ているうちもずっとカーテンを閉めてある部屋ってあそこだけだから、それがなかったので、すぐに分かった。
後、だいだいの位置も分かってたし。
建前なんだけど。
「まっ、こうして色々と綱渡りな君の殺人も、無事誰にも目撃されずに成功したわけだ。でも最後に口を滑らしてしまったのは単純に、君自体が殺人に対する抵抗が薄れたせいだろうねぇ」
「待って、こうくん」
そこで、木沢がようやく口を開いた。
「ん?、なに?」
木沢は、しっかりと僕を見据え、先ほど一瞬取り乱しかけたのが無かったように、言葉を発していく。
「でもそれって、全部こうくんの想像でしょ?」
と木沢は大正解のど真ん中を僕に突きつけてくる。
「黙って聞いてたけど、その中には何一つとして私が殺したって証拠がないじゃん。全部こうくんの想像で、筋道が通ってるだけで、こじつけだらけって言われてもしかたない代物だよ?。そんな考えで私を犯人扱いして欲しくないよ」
「まぁ、そうだね」
確かにねぇ。
・・・・・・ふむ。
それにしても、よく喋りますなぁ。
「こうくん。今の話し、とってもおもしろいけど、あんまり人には話さない方がいいよ。ハッキリ言ってその辺の三流小説よりつまらない」
「そう。でも別にいいんだよそれで、僕はね」
「どういう、意味」
「さあね」
もともと筋道も何もなく、全てが僕の頭の中で構成された物語なんだから。
だけど、それでも一様物語なのだ。
悪いけど僕は、夢とは違って結を作るつもりでいるからねぇ。
僕の場合は、起が歪なんだけど。
「そう言えば木沢」
「なに?、こうくん」
「昨日さ、僕らと木沢達で一緒に帰ったよね?」
「そうだけど、それがどうしたの?」
木沢がいぶかしむように僕を見る。
暗い廊下を、しっかりと胸に鞄を抱きしめながら。