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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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落ちて、落ちて、オチテ。
そんなところで。
その声が、聞こえた。

「それじゃあ駄目だね。女の子にはもっと優しくしないと」

聞き間違えるはずがないその声。
学校で毎日のように聞いているその声。
「男の子が女の子を泣かせるなんて減点だよ。それに男だったらもっと紳士に動かないとね。女性は言うことを聞いてくれないと思うし」
自分の目の前にいた人が、声のする方を向く。
そこには、窓から入る月明かりを背にして、肩を竦めた少年がいた。
「まっ、僕が言えた義理じゃないけど。・・・・・・それにそんなこと」

「どうでもいいから」

ね、と首を傾げるその少年。
男の子とは思えないかわいらしい顔をした少年。
彼が、そこにいた。





<18章=みっけ>





目の前で女の子を押さえつけているような体制にいるその男は、僕が言葉を発すると突然立ち上がった。
もしかすると僕も仲間に入れと勧誘されるのかと思ったけど、結果は杞憂に終わったようだ。
なぜならそいつはそのまま体を翻し、脱兎の如きスピードで走り去ってしまったから。
あぁ残念だね。
でもその潔さには敬服すよまったく。
だけど落第点だな。
女の子を泣かせたまま走り去っていくなんて。
とんでもない男だ。これも女泣かせの男の部類に入れていいのだろうか。
それに目的を果たさないなんて、日本男児としては不合格だな、まったく。
「もう、見えなくなっちゃった」
足音だけが、微かに響いて聞こえるけど。
まあいいか。
それでは、はてさて。
「んー、大丈夫?」
と、壁にもたれて引きつった表情で僕を見ている木沢さんにお声をかけてみました。
そのお顔はテレビ放送じゃあドラマが限界ぐらいか。
演技でそのレベルまで出来たらすごいだろうなぁとか思いつつ。
「・・・・・・ぁ・・・うん、大丈夫、かな?。」
そう言いながら、人間らしく首を傾げる木沢さん。
「僕に聞かれてもねぇ」
「へ、えへへ。そう、だよね。・・・・・・あ、ははっ、・・・・・・びっくり、しちゃって」
「そうかそうか。そいつは失敬」
「本当だよ。すっごい驚いたんだよ」
「ごめんね」
「うん・・・・・・うんん」
木沢は頷いてからなぜか首を振る。
それはどっちなんだ。
「でも、ありがとね。こうくん」
「別にいいよ。それに僕にも都合があってね」
「都合?」
「うん。でもとりあえず先にここからでようか。夜の学校はさすがに気味がわるし」
なんて僕は冗談を言ってみる。
僕だってもうすぐ18才なのである。
お化けぐらい別に恐くないのだ、出会ったことはないけど。
でも夜の学校がそれっぽい雰囲気があるのは間違いがないけど。
別に僕は季節はずれの肝試しに来た訳じゃないし。
「そ、そうだね。なんか出そうだしね」
と言って、木沢さんは手で汚れを払いつつ立ち上がる。
そして、ゆっくり進みつつある僕の隣にならぶ。
むふふ、夜のデートだぁい。冗談よ。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・こうくん」
「なに?」
木沢に話しかけられて、僕は歩いたまま木沢の方を向く。
「その、あのね」
「うん」
「その、こうくん。やっぱり、えっと」
「うんうん」
「んと、・・・・・・助けて、くれたね」
木沢は僕に向かってはにかみながら言った。
「ん?」
それに僕は疑問符で返す。
「ほら、この間菜月ちゃんが言ってたじゃん」
「うん?」
「あの、私を助けてやってくれって」
「ああ、そう言えば」
そんなことを聞いたような。
あの時は自分のことでもないのに美島は必死だったなぁ。
ふむふむ良い子だ。
僕とはちょっと違うけど。
「えへへ、こんな所まで来てくれて忘れてるなんてないよぉ」
「いや、僕を侮ってはいけない」
「えー、嘘だよ。だって夜の学校だよ」
「そう言う木沢はなんでこんな所に来たの?」
「え?、ぁ、うん。ちょっと忘れ物しちゃって、それで」
言いながら木沢は僕に両手で持ってた鞄を目で見る。
「ふーん、そう。それで襲われちゃあ世話無いね」
「えへへ、そうだね。でもこうくんが助けてくれたし」
コツン、と自分の頭を叩く木沢さん。
狙ってやっていたらなかなかの大物だと思ったけど、やっぱり天然キラーなのだな、うむ。「でも本当にこうくんが来てくれて助かったよ。もしこーくんがいなかったら、今度は私が殺されてただろうし」
「んん?」
「えっ?、だって、あの人が、その・・・・・・2人を殺した、犯人じゃあ」
木沢はたどたどしく言う。
けれど僕は、ひねくれ者なので空気を乱す。
「何言ってるの?」
「だって、私のこと、襲って・・・・・・」
「なーに言ってるの」
僕は自分にしては珍しく満面の笑みを作る。
中身も何も、そもそも何の意味すら持たない笑みを。
そこにあるのは、ただの虚構の器だけ。
だけど僕は、だから僕は。
空っぽの僕は。何もない僕は。
でも、ただ一つの目的のために。
凪宮を、躍動させる。

「あの2人を殺したのは、君でしょ。木沢梨沙さん」

笑いながら言うのはなかなか苦労したけど、僕は噛んだりせずに真っ直ぐに彼女に向かって言う。
そして、僕の瞳には。
はにかんでいた彼女の笑顔が固まり、そして少しずつ、その笑みが消えていく過程が映っていた。
木沢は、苦笑のような表情をしながら、口を開く。
「何、言ってるのかな?。よく、分からないんだけど」
「だーかーら、君が殺したんでしょうが。千種一哉くんも高桐真梨子さんも」
「こうくん、ちょっと待って、なんで、今そんな話がでて・・・・・・」
「むしろ今だからなんだけどね」
「どうして私なの?、私は今襲われたんだよっ」
「襲われた、ねぇ」
「そうだよっ、私がっ、私が襲われたんだよ!」
少し、声を荒げる木沢。
「まぁ、木沢が襲われたとして、でもそれが木沢が2人を殺していないという事とは直結しないよね?」
「そうかもしれないけどっ、しれないけどっ!・・・・・酷いよっ。」
「・・・・・・」
「こうくんは、私が人を殺したって言うんだね!?」
「うん。何度でも言うし、変えるつもりもないよ」
「っ!・・・・・・酷いよ、私、わたし・・・・・・」
木沢は涙目で、僕を見上げる。
「わたしっ、こうくんに助けてもらってっ、嬉しくてっ・・・・・・でも、そんなのって、最低だよっ。こうくんは、酷い、よ・・・・・・」
「ごめんね」
「謝るんだったらそんな冗談やめてよっ!、私は今、怖くて、それで・・・・・・」
「木沢」
「・・・・・・・・・・・・なに?」
「なんで、2人ともが殺されたって知ってたの?」
「ぇ?」
僕の言葉に、呆ける木沢。
「なんでって、女の子の方は、この目で、しっかり見て・・・・・・」
「うんうん」
「最初の人は、友達から、聞いて、」
「その友達からはなんて聞いたの?」
「だから、人が死んだって」
「死んだって聞いたの?」
「そうだよ。それで、2人目も出て、私っ、」
「木沢」
「っ、だから何が言いたい・・・・・・」
「どうして殺されたって分かるの?」
「え?」
「2人目をその目で見たってのは分かる。でも友達からは死んだって聞いたんでしょ?、だったら変だよ」
「なに、が」
木沢の表情が、少し、堅くなる。
僕の口は、思考よりも、なめらかになる。