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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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「あっ、ああ。そんな、感じ」
茉矢木くんは僕に合わせるように頷く。
「ふーん。じゃあさ、なんで上履きのままだったの?」
「え?、上履きって・・・・・・」
「だってさ、ゴミを捨てに行くなら外に出なきゃいけないでしょ?。うちの学校って非常階段の扉全部閉まってるかさ、下駄箱にまわらなきゃ外出れないじゃん」
一様裏技として窓から出るという手もあるけど。
僕の言葉に茉矢木くんは苦笑いで答える。
「あー、それな。ちょっと履き替えるのが面倒でそのまま外に出ちゃったんだよ。狩谷先生には内緒にしてくれよな。あの人、そういうのはめちゃめちゃ厳しいから」
「大丈夫。僕は口は堅いほうだからね」
それにきっと、1時間もしたら忘れちゃいそうだしね。
どうでもいいから。
そんなこんなで僕らが雑談しながら昇降口に向かうと、そこには竹刀袋を背負った美島となぜか濡れている上履きを持っている木沢がいた。
「お、おっすこうくん。茉矢木も」
「えへへ・・・・・・」
明らかに挙動不審な美島と、いつも通りな木沢。
気になる方にだけ質問してみた。
「なんで上履き濡らしてるの?」
「え、えっとね。さっきので、ちょっと、びっくりしちゃって・・・・・・。その時に、その、絵の具で汚れちゃって・・・・・・・・・・・・」
その先の言葉を詰まらせる木沢。
だけど視線を逸らさずに、息をのんで僕に質問をぶつけてくる。
「その、また・・・・・・殺されたの?」
「・・・・・・・・・・・・」
その言葉に、明確に表情を曇らせたのは、やはり、美島さんだった。
そして長めのポニーテールが、微かに揺れたので、今度こそ引っ張ってやろうかと思案していたら、茉矢木くんが口を開いた。
「大丈夫だって。死んだ2人とは俺達なんの関係もないじゃん。そりゃ今回は俺が呼ばれたけどさ、それは別に殺されたこととは関係ないことだし」
まぁ僕を除いてだけどね。
この3人は少なくとも茉矢木くんの言うとおり関係はなさそうだけど。
うーむ。
茉矢木くんもフォローしたことだし、僕も紅葉が来るまでの時間潰しに何か言っておこうかね。
「そうそう。それにきっともうすぐ解決するって」
「え?、どうして?」
木沢が不思議そうな顔で僕に聞いてきた。
他の2人も同様の表情で僕を見てくるので、なんだか少し照れてきたこともない。
「明日ね、警察が特別廉を封鎖して一斉に調査するんだって。だからきっとすぐに解決しちゃうよ、こんな事件」
そして学校に平和が戻るさぁ、どうでもいいけど。いいんだけど。
だけど、どうでもよくないことが、1つある。こんな、僕にとっても。
「・・・・・・・・・・・・」
1人、際だって暗い人がいたので、何となく、いつも思っていた事を決行してみた。
「とう」
「きゃっ!」
予想以上に可愛い声をお出しになったのぉこのおなご。
なかなか引っ張りがいがありました。
「な、なななななな何をするっ!こうくん!」
「ナニをしたんだよ美島さん」
「?」
「何でもないよ。ごめんね、何だか引っ張りたくなっちゃて」
「そ、そうか」
「うん。なかなかいい手触りだったよ」
「そ、そうかっ、ははっ。さすがこうくん、この悪代官めっ」
「いやぁ、姫属性には敵わないよ」
「いやいや、でも幼なじみ萌属性にはさすがの私も敵わないよ」
と中身のない空元気の会話をしてみたけど、うむ。
それにしても。なんだか僕が励ましてるみたいになっちゃたなぁ、どうしたことか。ただ欲求に従ったあけなのにねぇ、まったく。
どうでもいいけど。今日あたりももちゃんのも引っ張ってみることしよう、うん決めた。絶対にやろう。
「なんの会話だよ。」
と茉矢木くんは苦笑いで突っ込んでくる。
ふっふっふ、君が僕達の域に達するにはあと3千里ほどたらないぞ。
「えへへ、でも菜月ちゃんちょっと元気でたね」
「む、何を言っている、私は初めから元気だぞ梨沙」
「うん、そうだね。元気だよね」
へへ、と笑って舌を出す木沢さん。
ズキューンとどこかで何かが撃たれた音がした気がする。
念のために言うと僕じゃないぞ。
「かわいいよね。ね、茉矢木くん」
「え?。あ、うん。そう、だな」
茉矢木くんはそう言いながら頬をかく。
目に焼きつけときな、木沢狙ってる男子はいっぱいいそうだし。
・・・・・・ってそうだな。
「木沢、そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?。外もだんだん暗くなってきたし」
「うん?・・・・・・、あ。そ、そうだね」
「そうだな。暗くなる前に急いで帰ろうか。」
美島と木沢はどうやら僕の言った意味が分かったようで、小さく頷く。
「んじゃ、俺も帰ろうかな。こうくんはどうすんの?。一緒に帰る?」
茉矢木くんの言葉に対して、僕は首を振る。
「ごめんね、僕はちょっと用事がまだ残ってるから。じゃあね」
「うん、またね」
「さらばだこうくん」
「じゃあな」
1人侍がいた気がするがまあいいか。
3人にたいして軽く手を振り返しつつ、僕は手に残った美島さんの髪の感触を思い出しポッと赤面・・・・・・・・・・・・念のために言うけど嘘だからね。
さすがにそれぐらいじゃ赤面しない程度には耐性はあるさ、自信はないけど。
それから僕は、そのままにしておいたプリントの山をどうするか迷い、1持っていく2そのまま放置しておくかの選択で考え、隠れ選択第3のシュレッターにかけるという選択をするのもおもしろいなぁとか思いつつ、結局1番安全策の1を選んだとさ。
みんなもこんな大人になっちゃ駄目だぞ。
人生は冒険してなんぼだぞ、どうでもいいんだけど。
僕は受け身だからなぁ。
とにかくプリントを先生に届けて、それから待つこと1時間ぐらい。
僕よりも長く応接室で警察に詰問されていた紅葉は、不機嫌そうな顔をさらに不機嫌そうにして帰ってきた。
「お帰り」
とりあえず満面の笑みから笑みを抜いた顔で出迎えてみた。
そして鞄を鈍器に変えて遠心力を足したものが僕の頭に直撃した。
随分不機嫌だなぁ。紅葉あんまり好きそうじゃないもんね、ああいうおじさま。
「・・・・・・・・・・・・」
紅葉はそのまま無言で、下駄箱から靴を取り出しているので、僕も同じように取りだし、外に出る紅葉の隣に並ぶ。
「私は」
そこで、紅葉は言う。
「人を殺さない」
僕の方をみずに、前を見たまま、そう呟く。
「うん」
それに対して僕は、頷いて、言う。
「分かってる」
「絶対に、私は、殺さない」
「分かってるよ」
「殺さない、殺さない、殺さない。・・・・・・でも」
紅葉が、僕の方を向いた。
「死んだ」
その表情は、能面のように、動かない。
「また死んだ。人が死んだ。私の側で、死んだ」
「そうだね」
僕も、紅葉の方を向いて、頷く。
「まだ、誰か死ぬ?」
「どうだろうね」
「次は、誰が死ぬ?。私?」
そう言いながら紅葉は、本当に人形のように、首を、傾げる。
「紅葉」
「コウ。次は、誰が死ぬの?」
「大丈夫だよ、紅葉」
「コウ」
「うん」
そんな紅葉を見ながら、僕は、言葉を紡ぐ。
「大丈夫。いつも通りだよ。いつも通り」

「この悪意、僕が殺す」

「だから、大丈夫だよ。昔から、そしてこれからも、僕が全てを殺してあげる」
僕は、そう言いながら、満面じゃあないけれど、静かに、微笑んでみる。