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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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赤い液体が流れる合間から見えたなんだか白い物とか、さらにその奥のピンク色の物とか。
あと確か、眼球も飛び出してた気がする。
あんな状態で誰か分かるほど僕はの目は肥えてないし。
むしろ分かるやつがいたら驚きだけど。
それ以前に、この学校に僕が顔を見ただけで分かる人間なんてほとんどいない。
きっと名前を聞いても分からないだろう。
胸を張って主張してもいいぞ。
なんてったって両手の指ですからなぁ。
どうでもいいけど。
「・・・・・・・・・・・ん?。」
僕が頬杖をついて窓の外を見ていると、あっ、僕の席窓ぎわ一番後ろね、何となく思ってみた。
とにかく、僕の制服の袖を引っ張ってるやつがいる。
顔をそっちにというか前に向けると、美島が横向きに座って僕の方を向いていた。
「ねえねえこうくん。」
「なんだい美島さん。」
僕が答えると、美島は僕の袖を離し、少し僕の方に寄ってきた。
そして内緒話をするみたいに、小声で言う。
「噂で聞いたんだが、人が死んだんだって?。」
僅かに、目を細めている美島。
どうやら電光石火の勢いで話は広がってるようだな。
まあ、学校みたいな閉鎖空間だと当たり前だけど。
「そうらしいね。」
「そうか。・・・・・・・その、こうくんは、・・・・・・・・・・・・・・見たのか?。」
そう言って美島は、細めていた目をさらに細めて僕を見る。
別にどうでもいいけど、何だか睨まれてるみたいだ。
なにやら探ってるように見えなくもない。
意図はたぶん、見当がつくけど。
美島の質問に、僕は曖昧に頷く。
「さあね。」
「・・・・・・・・・じゃあ、これも聞いた話だけど。初めに見たのは、まぁ第1発見者ってやつか。朝練に来てた陸上部の男子なんだって。」
「へぇ。」
「野太い雄叫びが響き渡ったらしい。」
「へぇ・・・。」
なんだかそう言うと嫌な声みたいに聞こえるな。
出来れば聞くのは女性の方が良いわけでもないけど。
「・・・・・・・・そう言えば美島も朝練あったんじゃないの?、剣道部の。」
「ああ、あった。」
「そんな大声だったのに気づかなかったの?。」
「いや、たぶん聞こえていたと思う。」
「なんで外に出なかったの?。」
「聞こえていたが練習に集中し過ぎて気づかなかったようだ。」
どこの侍だおまえは。
どこぞの二刀流の剣士の生まれ変わりかと疑ってしまわないけど。
「他の部員は?。」
「ん?。」
「いや、だから他に部員は気づかなかったのかなって?。」
「ああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういえば。」
「そういえば?。」
「終わったとき数人いなかった気がするが、あれはもしかして外に見に行っていたのか。」「それは気づこうよ。」
どんなマイペースな侍だ。
まぁ、集中すると周りにが見えなくなるタイプだもんな、美島さん。
そんなのが次期主将でいいのかと疑いたくなる。
どうでもいいけど。
「それで、・・・だ。」
「?。」
微妙に言葉の歯切れが悪い美島。
僅かだが、僕から視線も逸らしている。
何かを躊躇ってるようだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
うむ。
なかなか口を開かない。
何を言おうとしてるのかは分かるけど、なかなか言わないので僕から言ってみた。
「誰が、死んだんだろうねぇ。」
「っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
完全に目を逸らしてしまった美島さん。
気まずそうな雰囲気が表情に現れている。
滅多に見れない表情なので、この際だからしっかり観賞しておこう。
ついでにいつかチャンスがあったらその馬の、おっと、ポニーテールを引っ張ってみようかなって考えたり。
冗談だけどね。
たぶん今やったら竹刀かなんか撲殺されそうだ。
君は着物よりもきっと袴が似合うんだろうなぁ、いつか部活を見学にでもいこうかなぁ。
たぶん行かないけど。
僕は紅葉で充分だ。
「・・・・・・・・・こうくんは。」
「なに?。」
「こうくんは、知ってるのか?。」
質問しつつ目線は僕の机の角に行っている。
表情には若干の後ろめたさというか、やっぱり躊躇いの雰囲気があるな。
前もこんな感じだったっけ?。
うーん、よく覚えていない。
「僕も知らないよ。」
何と言っても両手の以下略。
「そう・・・・・か。」
僕の答えに、美島は控えめに頷いた。
そして、この話はそれ以上発展することもなく、それ以前に新たな闖入者が登場した。
「いつまで自習なんだろうね?。」
僕と美島の間に割って入るように、木沢が教科書と一緒に移動してきた。
しかも器用に足を使わず椅子だけで移動。
僕も真似して机だけで移動しようと思ったけど止めておいた。
人間、思ってもやらないこと重要なんです。
どうでもいいけど、僕が言えた事でもない。
「少し飽きてきたよ。」
こちらは美島とは逆に特に普段と変化はない。
前もそうだったけど、木沢の案外周りに影響されにくい。
常に平常心って言うとなんだか悟っちゃった人みたいだけど、それに近い感じかな。
だからこの2人は仲がいいのかもしれないけど。
その辺は、僕には関係ないことだ。興味ないし。
「それなら学業に励みなさい。」
「そうなんだけど、テストはもうちょっと先だからね。あんまり集中出来なくて。」
てへへ、と照れたように頭掻く木沢さん。
萌・・・・・・・・・、いや冗談だけど。
「梨沙は頭いいからそこまで努力しなくてもいいでないか。」
木沢の登場で外面だけは立ち直った美島が言う。
「うんん。私、あんまり頭の出来良くないから、毎日努力しないとすぐ成績落ちちゃうんだよね。」
典型的な努力型の人の発言だ。
しかもそれを自慢していないところが、木沢さんが天然キラーたる特性なのかどうかはどうでもいいか。
「出来が良くなくて1割以内なら私はなんなんだ。」
若干ひがみっぽく言う美島。
「えっと、それは菜月ちゃんが毎日部活で忙しいせいじゃないのかな?。」
ホローが上手い木沢。
「む、それは確かに。」
「そこで納得するから成績が伸びないんじゃないか?。」
駄目人間の典型だ。
「むっ、そう言うこうくんこそどうなんだ?。」
完全に余裕が戻った美島が腕を組んで僕を見る。
まるで僕が美島と同類であると決めきっているみたいではないか。
墓穴を掘ったなとは言わないけど、そう言えば去年は違うクラスだったからな。
どうでもいいけど、木沢とは2年連続一緒だ。
ちなみに紅葉とは2年連続別だったりする。
「菜月ちゃん菜月ちゃん。」
「?、なんだ梨沙?。」
木沢は半笑いで、美島に言う。
「あのね。こうくんはこれでも」
これでもってなんだ。
「学年2割以内なんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘。」
そんなにショックっぽく言わなくても。
「本当だよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
今度はまた違った感じで目を細めて僕を見る美島。
なんだか仲間に裏切られた猿のような悲壮感が出ている気がする。
「別に、木沢に比べたら大したことないよ。」
「それは私に対する嫌みか。」
「そう思えるのは自分の努力に自信がないからじゃないのか。」
「私は別に努力をしていない訳じゃない。」
「そうなの?。」
「そうだ。ただ努力の仕方が分からないだけだ。」