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メギドの丘 一章

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 「当夜くんね、了解。とりあえず、あのことで話さなきゃいけないことがあるから、ついて来てくれる?」
 「あぁ・・・・俺も・・・・詳しく聞きたい」
 「んじゃ、こっち来て」
 そう言い残し歩いて行く奏を、未だにダメージが抜けない身体で当夜なりに全力で追いかけた。


部屋を出ると案外普通のオフィスビルみたいだった。病院でも何でもなく、人など視界の端にすら入らない。当夜が目覚めた病室に酷似した部屋は、オフィスビルの一角を利用し設けられたようだった。当夜は、そんな何の面白味もない風景を見ていても仕方がないので、大人しく奏の華奢な背中を眺めながら歩いた。
エレベーターに差し掛かり、奏が「上よ」と言ってエレベーターを呼び出した。
ボタンを押してすぐに扉が開き、乗り込み、奏が階数を指定した。その階数、なんと。

七十二階。

「七十二階まであんの!?」
当夜は思わずエレベーターという密室空間で叫んでしまった。
「ちょっと、うるさい! このビルは高層ビルなのよ。通称は『babel』と呼ばれているわ。詳しい話はまたあとでするけど、わたし達の拠点となる場所よ」
 七十二階なんて人生で初めての経験だなぁ、とのん気なことを考えながら当夜はエレベーター特有の浮遊感の中、エレベーターが目的地に着くのを待った。

――チィン

電子音が鳴り響き、同時に特有の浮遊感も消えた。
 両開きのドアが開き、そこに広がっていたのは絶景・・・・・・ではなかった。
そこに広がっていたのは、パソコンやデスク、モニターがひしめく空間だった。
「すげー」
当夜は、目の前の光景に、ただただ感嘆の念をあげるのみだった。
まず一番に目を引くのは横幅が優に二メートルは超えているモニターだ。
そして、その隣には両を隣りに二つずつ、三十二インチ程のサブモニターがある。今は何も映し出されてはいないが、何かが映ったら相当な迫力をもたらしそうだ。
「ようこそ。国家機密機関 超常現象対策室へ」
隣に立つ奏が当夜を振り向きながら言った。
 「・・・・・・ん?」 急に何を言い出すんだ、この子は、当夜は思わず首を傾げる。と、そこで大型モニターに一番近いデスクに座っている二十代後半の女性が椅子をガタッと鳴らしながら立ち上がりながら言った。
 「そう、国家機密機関 超常現象対策室。正確には東日本支部ね。私は、ここの司令官を担当してる北条佐江よ。話は聞いているわ。よろしくね、当夜くん」
 最後の『よろしくね、当夜くん』で佐江は当夜に対し、渾身のウインクを放った。もちろん当夜には精一杯の誠意を込めて苦笑いしながら答えることしかできなかった。
 「あっ、よろしくお願いします。」
 「んじゃ、佐江さん、後の説明、よろしくお願いします」
 奏が、佐江に向かって腰を折り一礼して自分のデスクに向かった。
 「分かってるわよ。そうね、奏ちゃん以外の子たちも分かるでしょ?」
 当夜は、佐江にそう言われてデスクに座ってパソコンを眺めている奏以外の男女四人に目をやった。当夜には、そのうち三人は見覚えがあったが、残りの黒髪でボブの女の子には見覚えがなかった。
 「涼、真弥、結、って言う三人は分かるんですけど・・・・もう一人の女の子が分かりません」
 当夜が正直にそう話した。というより、今、思い出したのだ。当夜自信今まで出会ったことのないタイプの人間が三人も揃っていたのだ。記憶も鮮明に蘇ってくるものだ。悪人、超絶バカ、単語、当夜のこの三人へのイメージはこんな感じだった。奏だけがまおもな雰囲気を出していた印象がとうやにはあった。
 「うっほおおお! あれだけの中でよく覚えてたなぁ! 当夜サイコー!」
 真弥が瞳を輝かせ、勢いよく立ちあがりながら叫んだ。もちろん、急な力がかかった椅子は、無残にも真後ろに吹っ飛ばされ壁に激突した。
 あぁ、こいつはやっぱり超が何個か付くほどのバカなんだ、と当夜は心の中で深い溜息を吐いた。
 「真弥くん。ちょっと静かにしなさい」
 佐江に怒られ、はぁい、と返事をし、大人しく真弥は席に着いた。
 「お前、少しは黙ってらんねぇのか」
 そして着席と同時に涼から文句を言われる。それでも真弥は全く反省してる様子はなくヘラヘラとしながら言い訳をしながら謝っている。それに対し涼が文句を言い、また真弥が言い訳を言う、というのを繰り返している。
 「はい、そこまで。それ以上やるなら外でやりなさい」
 そこで佐江がまた一喝した。涼が遠慮の欠片もない舌打ちをし、話を終了させた。
 よし、と佐江が笑顔で頷き話を再開した。
 「当夜くんは、まだ朔夜ちゃんと会ったことがないのね」
 「はい」
 「んじゃ、紹介するわ。朔夜ちゃん、ちょっと自己紹介してもらっていい?」
 佐江がそう言うと、黒髪ボブぼ女の子が立ち上がった。立ち上がってみると、この女の子は案外小さかった。身長は百五十センチ弱であろう。そして童顔。妹にほしいタイプだな、と当夜は心から思った。いや、願ったのかもしれない。
 「はい、わたしが朔夜です。苗字が祇園で祇園朔夜って言います。当夜さん、よろしくお願いします」
 朔夜が手短に自己紹介を終わらせ、ペコリと当夜に向かってお辞儀をする。その姿がこれまた愛くるしく、当夜は思わず抱きしめて「可愛いなああああ」と叫びたい衝動に全身が駆り立てられたが、公衆の面前でさすがにそれはまずい、と戦力で理性を保った。
 「ありがとね、朔夜ちゃん。座っていいわよ」
 それでね、と言葉を区切り佐江は、デスクに置いてあったホットコーヒーを一口飲み、表情を変える。重要な会議に臨む会社の重役、というような真剣な面持ちになった。
 その表情を維持したまま当夜の方へと歩み寄った。
 「ここからが本題ね。いろいろと信じられない所もあると思うけど、今から話すことは全部本当のことよ。そして国家機密に値するから心して聞いてちょうだい」
 「分かりました」
 佐江の表情につられ、当夜も真剣な表情へと変えた。
 「まず、当夜くんには、私たちが今生きているこの『世界』の仕組みについて知ってもらわなければならないわ」
「・・・・・・世界の仕組み?」
「そう。世界の仕組み。まず初めに、当夜くんも含め、私たちが生きてる世界って俗に言う三次元っていうことは知っているわよね?」
「はい。まぁそれくらいなら知っています」
「じゃあ、四次元ってなんだと思う?」
「四次元・・・・異世界? でも四次元なんて、この世には存在しないんじゃないですか?」
当夜が四次元と言われてすぐ頭に思い浮かべることが出来るのは、異世界、異空間、などと言った普通の人が思い浮かべるようなことだけだ。
と、ここで何も映し出されていなかった大型モニターに九本の軸が映し出された。そひて、その軸が互いに組み合わさり綺麗な正方形を作り出した。
「異世界・・・まさにその通りよ。実際に四次元は存在するわ。この三次元は、縦軸、横軸、斜め軸で私たち人間を含め、物質を構成しているの。だからこれ以上、軸を足すことが出来ないから世間的には四次元っていうのは未知の世界って言われているのよ。でもね、物質を構成する軸を足すんじゃなくて、違う軸を足すことによって四次元は完成するわ」
作品名:メギドの丘 一章 作家名:たし