ツインテール探偵くるみの事件簿
くるみの前で扉が閉まった。
「ちょ、ちょっと」
ノブを回すが開かない。栞さんが扉を押さえているからだ。この人も好きだな。
「ワトちゃん、ワトちゃん」
ようやく開いて、半泣きのくるみが俺の胸に突っ込んで来た。背中が柱にぶつかって屋敷全体が揺れたような気がした。
「古いから気をつけて。崩れるかも」
「ここを集合場所にするから、あとは自由に見ていいわ」
1階の広いリビングで望月さんが言った。家具はすべてクモの巣が張っている。まだ夕方だが薄暗いのでロウソクを点けた。電気はもちろん通ってない。
「だれかサンダル履いてきたか?」
倉田先輩が青いサンダルを掲げたが、だれも答えない。
「さっき、掃除した時はなかったのに変だな」
普段なら食いつくくるみが固まっていた。倉田先輩から受け取って見ると、
「名前かな?」
消えかかっていたが、ひかると読めた。
「ひかるちゃんが帰って来た」
と、静かな声で望月さんが言った。
作品名:ツインテール探偵くるみの事件簿 作家名:へぼろん