ツインテール探偵くるみの事件簿
食後に談笑していると、望月さんが荷物を詰め込んでいた。
「どこか行くの?」
栞さんが訊いた。
「取り壊す予定のペンションがあって調査しに行く」
何の調査やら。だが目を輝かせたやつがいる。もちろん、くるみだ。
「行く、行く、行く」
「行ったら、朝まで迎えは来ないけど」
「うんうん」
「電気、ガス、水道は止まってる」
「うんうん」
「携帯の電波も届かないかも」
「行くー」
ということでぞろぞろ付いて行くこととなった。
男どもが外で待っていると、Tシャツにデニムのショートパンツ姿の栞さんが出て来た。制服と違って大人っぽく見える。次に水色のワンピースにむぎわら帽子のくるみ。想像通りだ。最後につなぎ服を着た望月さん。こちらも予想通りだろう。
「執事が来るんだって」
と、くるみが俺たちに言った。
「へえ、すごいな」
燕尾服の白髪の老人、もしくは無表情のイケメン、そんな執事を想像していた俺たちの前に現われたのは、
「けいちゃん、久しぶりだね」
髪が後退し始めた中年オヤジだった。乗って来た車もそば屋つじと書かれたバンだ。
「親戚の辻さん」
まあ、そんなオチだろう。
作品名:ツインテール探偵くるみの事件簿 作家名:へぼろん