ツインテール探偵くるみの事件簿
「へえ、この子がくるみか」
栞さんが金網越しにウサギの頭を撫でていた。耳が垂れているのでツインテールみたいだ。
「紛らわしい名前付けないでほしいわね」
「あなたみたいな人に言われたくない」
歩美が後ろに立っていた。入学式の写真と違って、メガネを外し、みつあみはストレートになっている。
くるみと歩美がにらみあった。
「まさか、歩美がうちの最初の依頼者だったなんてね」
「憶えてたんだ」
「渡辺先輩と付き合えたんでしょ。わたしに感謝すべきじゃない」
「まだとぼけるつもり?」
「何のこと?」
くるみが小首を傾ける。
「まあいいわ。でもね、私は諦めたわけじゃないんだから」
「いいわよ。探偵、星村くるみがいつでも相手になってやる」
歩美が少し戸惑いながら、
「大した自信ね。そんな魅力があなたにあるっていうの?」
「推理力は実証済みでしょ」
「さっきから何を」
「あのな、くるみ。俺の名前……」
栞さんがキッとにらんだ。
「くるみは繊細なの。ショックを受けるでしょ」
こいつがそんなタマか。
「何の話? ワトちゃん」
そのやり取りを見ていた歩美がふと何かに気付いた。
「ま、まさか……そんな、だって」
驚いた顔で二、三歩退いていた。
「ちょっと勘違いが多いけど、可愛い子よ」
栞さんがくるみの頭を抱いて微笑む。
「もう、栞ちゃん」
歩美が大きなため息をついていた。
作品名:ツインテール探偵くるみの事件簿 作家名:へぼろん