ツインテール探偵くるみの事件簿
「くるみの推理通りだと思うわ」
探偵事務所に戻ってから栞さんが言った。テーブルには缶ジュースが10本並んでいた。くるみが『謝罪だけじゃ足りない』と言ったら、渡辺先輩がテニス部から調達してくれたのだ。先輩も後ろめたかったのだろう。くるみはムスッとしながら、缶を開けた。
「証拠はあったけど確実じゃなかったから、あの手しかなかったのよ」
「なにかわかってたんですか?」
「ワトくん言ったでしょ。トロフィーが落ちてからすぐに二人が来たって」
「ええ」
と、言ってから、あることに気付いて栞さんを見た。
「そう。屋久先生は飛んでいるボールを見ている可能性があるの」
とは言っても全国大会優勝者のサーブだ。見えたかどうか分からない。だが、くるみが推理していたとき、『なるほど』と呟いていた。ひょっとしたら見たのかもしれない。
「それなら決定的な証拠ですね」
「だけど、アバウト先生だったから追求するのはやめたの」
「あの手ってどういうこと?」
くるみが訊いた。
「最初にワトくんをかばったでしょ。だったらワトくんを追い込めばって」
俺にとっては危ない橋のような気がする。
「わたしも内心ひやひやしてたのよ」
と言って笑った。この人は。
「でもなんとなくだけど、歩美はワトくんが好きなんじゃないかって」
俺とくるみが飲んでいるものを噴き出した。
「な、なんで」
「だからなんとなくって言ったでしょ。根拠はないわ」
作品名:ツインテール探偵くるみの事件簿 作家名:へぼろん