ツインテール探偵くるみの事件簿
「歩美の計画はこんな感じだと思うわ」
栞さんが説明を始めた。
まず、トロフィーを借りたいと言って、屋久先生に校長室を開けてもらう。先生が職員室に行ってから、くるみの写真を床に置き、窓を開ける。
「歩美が開けたんですか?」
「校長先生は外出中よ。閉まってたと考える方が自然でしょ」
運良くボールが外に出て回収できれば、計画はさらに完璧なものになる。だが、俺とくるみが探していたので回収できなくなったのだ。
「渡辺くんにはターゲットが誰か、教えなかったんでしょうね」
歩美も隠れていたのでターゲットが違うことがわからなかったのだろう。そして、校長室の前に来た俺を見て渡辺先輩が『これから実行する』と携帯で伝え、歩美は屋久先生に『校長室で物が壊れる音がした』と告げる。
「どうして実行した後に連絡させなかったんですか?」
「それじゃ遅いと思ったんでしょ。同じ状況をくるみで想像してみて」
くるみを壊れたトロフィーの前に立たせてみた。
「わたしは逃げたりしないわよ。失礼ね」
と、口を尖らせた。呼び出しにぐずってたのは誰だよ。
「ボールを打ったときに屋久先生に告げている、それが歩美の計画だったと思うの」
それならあんなに早く校長室に来ることはなかったはずだ。
「なにかあって渡辺くんはすぐに実行できなかったんじゃないかな」
と言ってから、俺を見て、
「ワトくん、校長室に入る前に何かしてなかった?」
「ああ、そういうことか」
携帯で話していたことを説明した。
「くるみに救われたようね」
騒ぎ立てなければ穏便に済んだかもしれないが、中途半端に疑われていたのを解消してくれたのは確かだ。
「ありがとな、くるみ」
「じょ、助手が巻き込まれた事件を解決するのも探偵の仕事だからよ」
「夏のプールのときも名推理発揮してたよね」
「わたしはいつも名推理してるわよ。失礼ね」
と、少し顔を赤らめて缶を傾けた。
こうして『1年生最後の事件』の幕は降りたのだった。
作品名:ツインテール探偵くるみの事件簿 作家名:へぼろん