君に追いつきたい
あの智之を二人でアウトにできたことが嬉しくて、ベンチへ戻ってからも二人は先ほどのプレーについて話していた。これは小学生だった頃から時々行っていたプレーで、決まったときの爽快感がたまらない。さらに、今回智之がアウトになった瞬間に見せた顔は、良一の人生で最も気持ちのいい光景だった。
「でも、一点取られちゃったね」
「まだ一回の裏。これからだよ」
水を飲みながら良一は答える。そう、まだまだこれからだ。中学野球は七回で試合が終了するが、それでも攻撃はあと七回もある。智之の鼻を明かすチャンスもまだまだあるのだと、彼は自分に言い聞かせた。