【完】恋愛症候群【過去作】
恋心欠けて
俺が思うに、林千歳はタンポポなんかじゃない。マリーゴールドだ。
「ごめん。意味がわからないぞシュウ氏」
「要するに、まわりが見えてないっつーか知らな過ぎるっつーか…。それにそれが正当で、でも悲劇のヒロインにはなるまい、と見せている」
俺がそう語ると、タカシにはやはり理解出来なかったようで、うん?と首をひねったまま動かない。
「とりあえず凄く問題が捻れはじめてる」
「や、やっぱりアキラくーんが麗子チャンと付き合いはじめたから…!?」
「どうしてアイツは問題をこうややこしくするんだ……」
俺たち二人は深い溜め息をついた。
「でも、シュウ氏の聞いた所によると、千歳チャンはもうアキラの事、なんとも思ってないんだろ?なら、もうこのままで良いんじゃないか?」
確かに、林千歳は『愛情は最高に薄れた』と言っていた。
だけど…、
「マリーゴールドなんだよ。林千歳は」
「またそれ?」
『林千歳はタンポポではなくマリーゴールド』を主張する俺をタカシは呆れたように見やった。
だけどこれだけは譲れない。
林千歳という人物は、超がつく程の感情的な性格だ。だから、嫌な事があったら嫌と言い切る。だけど、それと共に、どこか臆病である。
きっと本当は後悔してる。
だけど、言い出せないんだ。
「アキラが、あの北条麗子と付き合いはじめたから」
林千歳のコンプレックスである『幼い』とは天と地程も差がある、『綺麗』な北条麗子と。
「…シュウ氏、トリップしてない?」
「…なんだか頭が痛くなってきた」
そもそも、何故俺はこんなに悩まされている?
作品名:【完】恋愛症候群【過去作】 作家名:木白