【完】恋愛症候群【過去作】
フールandループ
「アキラ、北条麗子と付き合いはじめたって」
そう言うと、俺の親友であったアキラの『元』彼女・林千歳は、眉を寄せた。
微塵も不快を隠さない。それが子どもっぽいんだよなぁ。
やがてそれを緩やかな笑みにかえ、瞳を細め口を開いた。
「うん。そうらしいね」
あの『元』彼氏が元彼氏なら、やっぱり『元』彼女も元彼女。強情な所が似てると思う。
「いーのーぉ?俺、お前らが意地はってる様にしか見えないんだけど」
「意地?まっさかー」
驚いたように目を丸くして、けたけたと笑う林千歳は、花に例えるならばタンポポのようだった。
「ただ私は、面白くないだけだよ」
階段をトンと一段下がって、林千歳が俺を振り返る。
ちなみにこの場所は、生徒が滅多に通らないという、科学準備室近くの階段である。
何故そんな場所に?と思うが、もう一人の友人・タカシが『ここは秘密の話にはもってこいさ!』とか言うから、彼女を呼び出した。
ただ、それだけ。
「面白……?」
「佐々木君があっさり北条さんになびいたのが。男の子ってやっぱり薄情なのだね」
「要するに、アキラが君に泣いてすがれば、ゆるしてもらえるのかな?」
「ねぇ、ちょっと勘違いしていない?」
また階段を一段おりて、林千歳は自分や俺に言い聞かせるように言葉を強めて言った。
「そもそも彼はそれを望んでいたし、あの時…、彼が私を試したあの時に、私の彼に対する愛情は最高に薄れてしまったんだよ」
おい、アキラ。
この問題は、俺が思った以上に深刻らしいぞ。
作品名:【完】恋愛症候群【過去作】 作家名:木白