【完】恋愛症候群【過去作】
ストレイドッグ
「このシュウ様が思うに、林千歳はお前が思ってるほどお前の事を好きじゃなかったんじゃ?」
「うわぁシュウ君そりゃキツイよ」
ギャグのような二人のやり取りも、今の俺にとっては傷口に塩を塗られて、更にその上から唐辛子をすりこまれたぐらいのダメージだ。
俺の目線の先ではいつもと同じガキンチョな千歳が、他の女子達とケタケタ笑っている。
「……アキラー、生きてるかー」
「駄目ですシュウ隊長!反応がありません!まるで屍のようであります!」
お前ら…本当にこの状況楽しんでるな…?
「しゃあねー…行くぞ、タカシ」
「どこへでありますか警部どのぉおお!」
「ホシの所だ」
時々、こいつらは血が繋がってるんじゃないかと疑いたくなる。ノリすぎだろ、シュウも。
てかホシ…犯人…?
「やめッ…」
気付いた俺が屍状態から脱出した時はもう遅く、既にシュウとタカシが千歳に話しかけていた。
「なんでアキラの事フッたの?」
ノォー!!
短刀直入すぎるよシュウ!
知らなかったらしい女子達がざわめき出してるから!
「だって…、」
そこでちらりと千歳が俺をみた。
「佐々木君、綺麗な女の子が好きだって言うんだもん……」
既に苗字呼び!?
悲しげに眉を潜めて、唇を噛む様子が、あたかも捨てられた犬のようで……、
「だ、大丈夫よ千歳!世の中に男は沢山いるわ!」
「そうだよちーちゃん!だいたい男ってのは、綺麗だったり巨乳が好きだったり……上辺ばっかり見るんだから!」
あれ。俺悪者扱い?
「俺はー……」
千歳が大好きだ!と叫びたかった。
そこで千歳が首を横にふって女子達を宥めてなければ。
「佐々木君を責めないで!」
「千歳……?」
心が少しキュンとした俺を、千歳の次の言葉が地平線の果てまで吹っ飛ばした。
「だって佐々木君、リンちゃんの事が好きだったの……それを私が引き離したんだよ」
女子がしゅんとなる。
あまりの展開にシュウは頭を押さえ、タカシは目を見開き、俺は『千歳が好き』と叫べなくなった。
(捨てられたのはこっちだというのに)
作品名:【完】恋愛症候群【過去作】 作家名:木白