【完】恋愛症候群【過去作】
番外編・タカシの憂鬱
神様、あんたにだけ言います。
俺、高城タカシは、林千歳が好きでした。
昔、聞いたのときっかり同じく6年。6年後に、シュウと千歳は結婚式をあげた。
司会は勿論俺。
あの時、千歳チャンとアキラが別れたあの時。千歳チャンに話しかけたのがシュウじゃなく俺だったら。
同窓会の前の日、俺もシュウと一緒に買い出しに行ったいれば。
もしかして、今千歳チャンの隣で笑っていたのは俺だっただろうか。
そんな事ばかり考えていた。
でも、無理だ。
たとえ隣にいるのが俺だとしたら、今、ああやって幸せそうに笑っている千歳チャンはいなかっただろう。
3年前にサキちゃんと結婚式をあげたアキラは、今日はアキラそっくりな子どもを連れてきている。どうやら、奥さんであるサキちゃんは友達と温泉旅行へ行っているらしい。
ちなみにアキラに頼まれて、俺はその子の名付け親となった。
「……お二人に子どもが産まれたら、是非名付け親には俺が立候補します」
そんな事をいうと、会場に笑いが走った。相変わらずシュウと千歳チャンは幸せそうに微笑んでいる。
「秋、千歳チャン。幸せにな」
君への恋心を忘れる事なんて出来ない。今、真っ白いウェディングドレスを着た君が、本当に幸せそうに笑うから。
俺の好きな人は千歳チャンです。
俺が好きなのは、シュウとアキラという親友です。
俺は、この空間が大好きです。
ゆっくりと、意味のわからない涙が頬を伝った。
作品名:【完】恋愛症候群【過去作】 作家名:木白