小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

【完】恋愛症候群【過去作】

INDEX|17ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

 僕らはただ、不器用だっただけ






想いを告げあってからは、時間の流れが凄く緩やかで。


それを一応アキラに報告すると、『なんでお前らは二人揃って俺にノロケるんだよ』と言われた。


タカシには、二人で公園で日向ぼっこをしていた時に遭遇し、『なんか、青春とか結婚式とか通りこして熟年夫婦みたいだ』と言われた。


仕方ないじゃない。
二人でいるだけで心が満たされるんだよ。凄く幸せ、なんだ。











「二人はさーぁ、いつ、結婚式やんの?」


二人が座る隣のベンチに腰掛け、『呼べよー!俺が司会しちゃる!』なんて、オレンジジュースを飲みながら言うタカシに、秋と千歳は顔を見合わせた。


「大学卒業して、仕事はじめて、給料が安定してからだから……」


「最低6年ぐらい…?」


「長ッ!なにそれ。なんでそんなに!?」


「「焦ると、ねえ……」」


ガビーン!と口で言うタカシを見て、二人で笑った。


「あれ、何やってんの、お前ら」


「千歳さん!」


ぶらりと現れたのは、アキラと、


「サキ…?」


千歳の熱狂的な後輩・サキ。



「なんだ。アキラがノロケる彼女ってサキだったんだ」


「あれ。言ってなかったっけ?」


「千歳さぁーん!酷いんですよアキラ。あと3年は結婚出来ないって言うんです」


そう言いながら千歳に泣き(抱き)つくサキに、アキラ以外の3人は『あー…』と言った。


「大丈夫だよサキちゃん。俺と千歳、あと6年は結婚式あげないから」


「えっ!?なんでですか千歳さん!」


「いやほら、ちゃんとした老後を過ごしたいしね?」


「老後、ですか…」


「10年たっても20年たっても、もっとたっても。こうやってゆっくりと過ごして生きたいんだ。ね、秋」


「うん。最高だね」


もう夫婦のようなオーラをかもしだす二人を見て、サキは『素敵ですねぇ』と言った。



「でもでもサキちゃん?この二人の恋愛論は独特だよ?」


「いいじゃないですか。千歳さんらしくて!」


タカシの言葉をも一刀両断。


いつの間にかアキラはあいたベンチに座っていて、その光景を目を細め眺めていた。



「思うんだけどね、アキラ」


タカシとサキが何かを言い合い、千歳がそれをフォローする。


そんな横で、シュウはアキラに声をかけた。




「君たち、凄い不器用だった」


「は?」


「……ううん。俺ら全員、不器用だったんだ」


3人を眺めて言う秋を見て、アキラは『ふ…』と笑った。


「そうだな。俺も千歳も、お前も」


「タカシも、ね」



愛が無きゃ生きていけない。生きていけないけれど、生きてゆける。



「俺らはずっと、恋愛をし続けるんだ。ずっと」


まるで病気みたい。
浮かれて、沈んで、ドキドキしたり幸せになったり。

「病名は?」


「「恋愛症候群」」


会話を聞いていたらしい千歳と、秋の声が重なった。


「よーし!このまま皆で飯食いに行くぞ!てか俺に奢って下さい!」


タカシが勢い良く立ち上がる。


自然に手を繋いだ千歳と秋を見て、アキラは目を細めた。


「千歳さんの手は渡さないんだからーっ!」


あいた千歳の左手をサキが掴み、そのサキの左手をアキラが。
一人残ったタカシは、サキと千歳の間に割り込み、千歳の手をとった。


「あー!!」


「へっへーんだ!彼女いない歴イコール歳の数の俺に少しは優しくしてくれたって良いだろ!」


「むかつくー!」


「サキ、サキ」


アキラはサキの手をギュッと握った。


「あいつは哀しい男なんだよ」


「うわアキラ氏、なんか今のグサッときたよ!?」


ぎゃあぎゃあと騒ぎながら歩く。

千歳はふ、と微笑んだ。


「千歳?」


「…いや、」


好きとか嫌いとか、
それだけで区別なんか出来ない。

悩んで、悩んで、こんな風に馬鹿騒ぎしたり。


「悪くはないよね。こんな日も」


そう言って晴れやかに見上げる彼女の口に、そっと一つ、愛しい想いをこめてキスをした。





僕らはただ、
不器用だっただけ


ただ、それだけ





恋愛症候群・終わり