【完】恋愛症候群【過去作】
マンφウーマン?
女の人って凄いね。
それが電話の第一声。
「何を急に」
「だって、二つの命を頑張って支えてる。凄いよ、」
その言葉に、昼間の女性を思い出す。そういえば、お腹が大きかった。妊娠させたのか、コイツ。
「…籍はいれたの?」
そう自分で言って、また胸がキュンとした。
長い間忘れていたこの感じ。
そうだ、アキラと付き合った当初は、ずっとそうだった。それで……、
「…何の話?」
「昼間見たよ。女の人と歩いてるの」
なんだか、陳腐な昼ドラみたいだ。
でもそれに私は役不足。だって、阿木秋の彼女なんかじゃないし。
「俺ね、彼女いない歴イコール歳の数だよ」
一瞬思考がとまった。
その後に出した『は?』という言葉は、凄い間抜けに聞こえたに違いない。
「昼間の人はね、具合が悪かったのを俺が病院に連れていったんだ。その後旦那さんがきて……産まれそうだ、っていうと倒れちゃって。フフ…、それで『女の人は凄い』と思ったんだ」
「そう、なんだ」
「ねえ、俺は期待していいのかな」
ふと、阿木秋が言った。
「林が俺に言ってくれた恋愛論。ずっと考えていた。そして、俺も辿りついたよ」
『殺してしまいたいぐらいに愛してやりたい。殺してくれるぐらいに愛されたい。でも、大切にしてやりたい』
「殺したいぐらい愛しちゃったんだ。林の事。2年前からずっと」
愛が欲しかった。
殺されるぐらいの愛。
殺したいぐらいの愛を受け止めてくれる人が欲しかった。
「…ありがとう」
胸の痛みはもう、止まった。
作品名:【完】恋愛症候群【過去作】 作家名:木白