【完】恋愛症候群【過去作】
2年目の再会
同窓会として指定された場所に行くと、そこは小さな呑み屋だった。
誰かの実家らしいその店は、今日は貸し切りらしい。流石に20を過ぎている奴等が結構いるから、同窓会というよりは皆が皆、個々に呑んでいる感じだった。
「林」
呼ばれた方を見ると阿木がいて、手で『こっち』と言っていた。
他の女子も皆バラバラに男子達と呑んでいるから、阿木のいるテーブルへ行くと、阿木の向かいにはタカシと思われる人物が座っていた。
…こちらは、阿木とは正反対に明るい茶髪になっていた。
「わあ!ホントに千歳チャンだ!」
その反応もどうかと思うが、阿木がトントン、と自分の隣を指で叩いたのでそっちに座る事にした。
「どうぞ」
とグラスを渡され、酒をつがれる。
こいつ、なれてるな。と思ったのは心の中での秘密。
「あっ!アキラ!こっちこっち」
タカシが大きく手をふる。
「あれ、千歳だ」
私の向かいに座った佐々木アキラは、なかなかの美形に育っていた。…まあ、元々顔の造りが良いのは認めよう。
「シュウくーん?俺には注いでくれないのかな?」
「嫌だよ。面倒くさい」
アキラや秋のちょっとした掛け合いは今も健在で、クスリと笑うと、タカシが『ふわ~』と間抜けな声を上げた。
「千歳チャンってば、すごく大人っぽくなったよね」
その台詞に、アキラと阿木秋もがこちらをむく。少々、いや、かなり居たたまれない。
「化粧、してるんだ」
「…まあ、たしなむ程度に」
ふうん、と少し面白くなさそうに言うアキラは、やはり昔の彼のままだった。
作品名:【完】恋愛症候群【過去作】 作家名:木白