【完】恋愛症候群【過去作】
愛とは何か
「千歳」
と呼ぶと、彼女は驚いたように振り返った。シュウはというと、なんだか困ったような顔をしている。
「俺は千歳が大好きだ。好きじゃ表せないぐらいに愛してる。確かに昔は山口が好きだった。でも、その後はずっと千歳だけが好きなんだ。だから……」
「ちょっと、待って、」
千歳が、困ったように眉をひそめ、俺を止めた。
「今そんな事を言われても、困るよ。だって、」
「だって、私はもう君を好きなんかじゃない」
「……すまない、アキラ」
日の暮れかかった土手。
アキラを真ん中にして座ったタカシと俺。自分の膝に頭を埋めたアキラに、俺は謝った。
「……なんでシュウが謝るんだよ」
「何回も林に言われてた。もうお前を好きでは無いから、ヨリなんて戻せない。と」
「……」
「でも、林、な。わからないんだと。『好き』のかえし方がわからなくなっちまったんだと」
アキラがゆっくりと顔をあげる。
流石に泣いてはいなかったが、凄い惨めな顔をしている。
「あと、愛が」
「……愛…?」
「ああ、林はその…愛が独特らしい。自分で自覚していた。アー……『狂っている』と」
「は?」
アキラだけじゃなくタカシも首を捻った。
「『殺されるぐらいの愛が欲しい』とか、『愛すると殺してしまいたくなる』だと。……まあ、俺はそれも一つの純愛だと思うけど」
問題はお前なんだぞ。アキラ。
「…本当の『愛』ってなんなんだろう」
タカシがポツリと、呟いた。
作品名:【完】恋愛症候群【過去作】 作家名:木白