連載 たけこさん (終)
15話 同窓会
岳子が卒業した大阪府立笑芸高校は、大阪市中央区にあった。すぐ目の前に大阪城が大きく構えている。『笑芸』という名前はお笑い芸には関係がなく、その由来は知らない。
岳子にとっては47年ぶりの母校訪問、40年ぶりの同窓会である。
当時の面影はところどころにみられるが、校舎は建て替えられていて、見知らぬ建物となっている。
今まではホテルで同窓会を開いていたそうだが、クラスの参加人数が少なくなり、学校の食堂を借りて学年会を開くことになったのである。食堂といっても昔と違って、レストランの雰囲気があった。
学年418人の中、76人が集まっていた。
親友の打出こづちとは4年前に会っているが、他の人たちとはすっかり疎遠になっていた。若いころの同窓会は見栄もあって、出るのが苦痛に思う時があったが、もういつ会えるか分からない歳になってみると、また、生活に余裕が出て時間を持て余してくると、懐かしさが蘇り、会いたい、という気持ちが強くなってくるようだ。
遠方から駆け付けた人もいるが、やはりほとんどは近郊に住む人たちである。
「わあ岳子ちゃう? 久しぶり〜、えらいふけたねぇ〜、いくつになったん?」
「・・・同い年や思うけど・・・えーっと、えーっと」
「夢野香代、分かれへんかった?」
「えらい若造りしてるやん、どう見ても50歳。かなりお金かけたんやろ」
「ふふん、ちょっとね、チョチョっと注射をね」
「そんで若造りして、なんかええことでもあったん?」
「・・・・・・」
夢野香代は、食べることに専念し始めた。
「こづち、こっちこっち」
「ああ、ちょっと遅れてしもてごめん。ちょっと食べさして、お腹すいてんねん」
「なあ、あそこに立ってる人、竹井君ちゃう? 頭すっかり薄なってるけど、やっぱりカッコええなあ」
「髪の薄い人は男らしい、ちゅうことやな。その横にいてるんはひょっとして山田君? みんな歳とって、渋い感じが出てきてるやん」
「人生に味わいが出てきてるんやね」
「うちのダンナも同い年やけどな、ダサイで。喧嘩ばっかししてる」
「ご主人も外ではもててはるかもしれへんで。今は空気みたいな存在になってはるんやわ」
「おったら鬱陶しいけど、おらんかったら困る、かな」
「そうそう、うちもいろいろあったけど、一人ぼっちちゅうんも寂しいで」
「肝に銘じとくわ、ありがと。好き勝手な事言える友達ってエエなあ」
「そやで、気ィ遣わんでエエんがほんまの友達なんや。嫌なことは心の中にしまってる」
「嫌なこと言うたかいな」
「ま、ま、気にせんと、また会おうね。じゃ、また」
数年のブランクがあっても、すぐ当時のように気さくに話せる友達はいいもんだ、とあらためて認識した岳子であった。
作品名:連載 たけこさん (終) 作家名:健忘真実