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nameless

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 当家では双子の一方が亡くなることは大変不吉なものとして恐れられている。元々僕たちの家系は血筋的に双子が生まれやすいらしく、これまで何組もの双子が存在したそうだ。そしてその双子の代には決まって家が栄えた。何かの事業に成功したり、有力な政治家を輩出したりと家の繁栄に大きく貢献した。そのことから双子が生まれることは大変歓迎され、僕たちが生まれた時も大層親戚類から喜ばれたと聞いている。しかし、双子の一方が欠けたとなると話が変わってくる。
 僕達の一族の中では、双子の片方が死ぬともう片方の魂をあの世への道連れにすると信じられている。これは生き残った双子の片割れが、放心状態に陥ったり、まるで人が変わったかのように粗暴になったり、中には犯罪に走ったりしたことに端を発するらしい。このことから家の者は、きっと彼らは死んだ者に魂をみちづれに持って行かれたに違いないと思うようになり、双子が欠けることをとても恐れた。
 しかし、ある日これに関しての対処方法が、著名な占術師から授けられた。
 その方法とは生前の双子の絆を断ち切ることだった。つまり、二人の繋がりを完全に無くしてしまうこと。
 これが当家でずっと信じられてきたため、僕とジルはこれを最後に、永訣を強いられることになってしまった。
「……ジル、僕に何かやって欲しいことはないかな。今、この場で出来ることに限られるけど、僕に出来ることならなんでするよ」
「べ、別にそんな。やって欲しいことなんて――」
「なんでもいい。君のために何かをしたという事実を、出来るだけ残したいんだ」
 僕が少し強い語調でそう告げると、ジルは少し照れくさそうに、
「じゃあ、……手を繋いでくれる?」
 と言った。「お安い御用だ」と微笑み、僕は快諾した。
 彼女の手を握ると、その手は枯れ枝のように細く、石のように冷たかった。その手を温めるように両手で包みこんでやると、ジルは安堵するように穏やかな表情をした。
「アルの手は、あったかいね」
「ジルが望むのなら、もっと温かくなるよ」
 僕がそう言うとジルは「もう充分あったかいよ」とクスクス笑った。弱々しくも明るい笑顔だった。
「……アルは私のために充分色んなことをしてくれたよ。私のために外のお話を聞かせてくれたり、一緒に本を
読んでくれたり、寝るまで一緒にいてくれたり」
「僕は、……君のためになれたのかな?」
作品名:nameless 作家名:そあく