大陸戦線異聞
「仕事を放り出して身内とおしゃべりとは、随分なご身分じゃないか、ええ?」
その場にへたりこんでうつむいている女をにらみながら男がそう言い終わらないうちに、女が反論してきた。
「ち、違う!そんなんじゃ・・・」
「どう違うというんだ?」
「あ、あれだ・・・」
女が指さした方向、輸送機の眼下、真っ黒な煙を上げながら飛ぶ旅客機が飛んでいた。
「何だあれは・・・?」
「あ、それは私が説明します!」
二人のやりとりを無線越しに聞いていたフィオナが割って入った。
「私が乗ってる旅客機は、グリフォニア空港からピースシティー空港へ向かう予定でした。ですが離陸から程なくして、突如乗客の何人かがハイジャックを宣言したんです」
このご時世、ハイジャックや武装集団による略奪行為はさほど珍しい事ではない。男が機兵の輸送に海路を選ばずわざわざ民間機を利用したのも、海賊やシンセミアの潜水艦攻撃を警戒してのものだった。
「お前さんが無線を使えてる所を見ると、鎮圧は出来てるようだな」
「え、ええ、そうなんですが、機内で銃撃戦になってしまって、機長さんと操縦士さんがお亡くなりに・・・あと、ハイジャック犯はエンジンに爆弾を仕掛けていたみたいで、銃撃戦の時にいくつか起爆したみたいなんです。まともに動いてるエンジンは一つだけしか残ってないです・・・」
「さっきから同じ所をグルグル回っているのはそれが原因か」
「はい、まっすぐ飛ぼうとするとどうしても高度が落ちてしまって・・・」
「ちょっと待て、機長と操縦士が死んでるって事は、じゃあ誰が旅客機を飛ばしてるんだ?」
「えっと、その、わ、私が・・・」
「何だって!?」