大陸戦線異聞
おかしい。
窓の外のオレンジ色の山脈がゆっくりと流れていく。廊下の壁際に置いてあった円筒形のスプレー缶が男の足に触れて倒れると、ゆっくりと反対側へ転がっていく。
「旋回している・・・?」
すぐさま男は操縦室に向かった。
「おい、どういう事だ」
女は無線機に向かって懸命に何か喋っていた。
「おい!」
自分を無視して無線で話し込む女に苛立った男は、女の肩を鷲掴みにして怒鳴った。
「!?」
「何を鳩が豆鉄砲を食ったような顔してるんだ?」
「ご、ごめんなさい。気づかなくて・・・」
「状況を説明しろ。何故旋回している?何故東へ向かわない?」
「そ、それは・・・」
「一体誰と喋ってるんだ?」
「・・・」
女は目をそらして沈黙した。埒があかないと踏んだ男は女から無線機を奪い取り、マイクに向かって吠えた。
「お前は一体誰だ!」
スピーカーからは女の声が聞こえてきた。いや、女というよりは少女に近い感じだった。
「お姉ちゃん、どうしたの!?お姉ちゃん!?」
「お前は誰だ?パイロットと何を話していた?」
「あなたは誰?姉はどこですか?」
「俺はこの輸送機が所属するヘルメス・トランスポートに仕事を依頼した者だ。いつの間にか輸送機が目的地を外れているので輸送機のパイロットに事情の説明を求めようとしたら、オートパイロットにしたままお前と話し込んでいたので無線機を取り上げた所だ。」
ようやく状況を理解したらしく、無線の声に少し落ち着きが出た。
「ご、ごめんなさい、姉のお客さんだったんですね」
「こちらの自己紹介は終わったぞ」
「あ、は、はい、私はフィオナと言います。お姉ちゃん・・・じゃなくて、あなたが乗ってる輸送機のパイロットの、い、妹です!」