大陸戦線異聞
『茶番は終わりにしよう。シンセミアの招かれざるお客さんがた』
男が切り出し、さらに続けた。
『XA26483よりシンセミアの客人へ、貴機は武装した状態で統合政府領空を飛行している。もしこれが統合政府の合意を得ていないのであれば重大な協定違反であり、統合政府が警告無く実力をもって排除する事を正当化する行為である。最悪の結末を迎えたくなくば直ちに当空域を全速で離脱せよ。どうぞ』
『・・・』
しばしの沈黙の後、シップの背後を飛んでいた戦闘機四機が二機ずつ左右に分かれた。
----痺れを切らした、か
二手に分かれた四機の戦闘機は水平に弧を描くようなコースをとった。距離を取り、上から機銃かミサイルで機兵を撃墜するためだろう。
----くそ、何やってやがる!?
男はコックピットのサブディスプレイに先ほどから表示されている短い文字列に再度目をやった。
"即応戦力を急派する。対応開始は1分後"
統合政府軍からの通信だった。受信からとっくに1分は経っているはずなのだが、レーダーにはそれらしき機影は見あたらない。
ロックオンアラートが鳴った。自動的に機兵背面に搭載されてあるカメラが戦闘機を捉えた。メインディスプレイが赤く点滅する。空対空ミサイルの直撃を受ければ機兵と言えども大破は免れない。
----こりゃあ、年貢の納め時かね・・・
男の口元が情けなく歪んだその時だった。