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大陸戦線異聞

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「あー、あー、今機兵のコックピットに入った。聞こえてたら応答しろ」
「ええ、聞こえてるわ」

機兵は頭を進行方向に向け、仰向けの状態で貨物室に寝そべっていた。そのため男のコックピットと操縦席に座っている男も真上を向いた状態だった。
機兵のコックピットは非常に狭い。ある機兵パイロットはこれを「棺桶」と表現したが、全くその通りだと男はつくづく思う。戦場に放り出されれば、後は死ぬか、死に損なうか、どちらかしかないのだ。

「この機兵は専用の台車の上に固定されてる。で、その台車は輸送機の床に固定されているわけだが、さっきこっちで全て外しておいた。後は搬入用ハッチを全開にして輸送機の機首をちょいと上げてやれば、機兵は重力の法則に従って台車ごと放り出されるって寸法だ。出来るか?」
「ハッチの開閉はコックピットからでも出来るけど、それで大丈夫なの?」
「この方法で『前回』もうまくいったんだよ」
「・・・分かったわ。いつでもいけるから指示して頂戴」
「よし、次は旅客機の方だ。フィオナ、聞こえてるか?」
「あ、はい!聞こえてます!」
「タイミングとお前の操縦技術が全てだ。どちらかが少しでも狂えば旅客機は失速、墜落真っ逆さまだ」
「わ、分かってます!」

輸送機は旅客機の真上を、旅客機の旋回軌道をなぞるように飛んでいた。機兵の落下のタイミング、輸送機と旅客機の高度差、それぞれの速度、旅客機の方向、全てがタイミング良く一致しなければ、旅客機が空港にたどり着く事は出来ない。

「機兵はあくまでも陸戦兵器だからペイロードもたかが知れてる。一度フックにひっかけたら方向を変えられるほどの出力は出せない。だから旅客機が最寄りの空港の方向へ向く瞬間にフックを撃ち込む必要がある。分かるな?」
「はい!」
「スピードも、機兵のスラスターを全開にしても、旅客機の最低速度を維持するのがやっとだ」
「わ、分かってます!」
「よし、では次の周回に入った時に決行する。ハッチを開いて、俺の合図で機兵を振り落とせ」
「了解。ハッチオープン!」
作品名:大陸戦線異聞 作家名:橘健兵衛