君の夢買います
姉ちゃんはぼくをしげしげとながめてから、
「インチキなの?」
と、真顔で聞いてきた。
「うん。へんなおじさんが、何とか言う博士が作った夢を録画する枕だって言うんだ。で、夢を売ってくれって」
「へえ。なにそれ、くわしく聞かせて」
ぼくは、姉ちゃんに話してみた。へんなおじさんにあったことや、その研究所とかに行ったユウジとフユキが、この一週間でずいぶんつかれた顔をするようになったので、気になっていることも。
姉ちゃんはちょっと考えると、ぼくに言った。
「ねえ、ケン。インチキをみやぶる方法があるわよ」
「え? なに?」
「この枕、わたしに貸してよ。でもあんたが使ったことにするのよ。それでユウジ君といっしょに博士のところに行ってきなさいよ」
そうか、向こうはぼくにって言ったんだから、姉ちゃんが使ったら、姉ちゃんの夢が録画されることになる。
これでもし、ぼくの夢を再生したなんて言ったら、インチキを証明できるんだ。
「おーい、ユウジ」
ぼくは二階の窓からユウジに声をかけた。
「今夜からさっそく使ってみるよ。で、今度の土曜日はいっしょに博士の所に行くから」
窓から顔を出したユウジはVサインをして見せた。
ユウジをだますようで気が引けるけど、ヘンなことにまきこまれたら大変だ。
ぼくはインチキを見敗れるかと思うと、ワクワクして土曜日が待ち遠しくなった。
先生には、土曜日は家族ででかけるからと言って休みをもらった。
土曜日の朝七時、お母さんには早朝練習だと言って家を出た。ぼくが玄関のドアを閉めたのとほぼ同時にユウジも出てきた。
「よ」
元気そうに笑っているけど、またまたやつれたみたいだ。二人で公園に向かうと、フユキはもう来ていた。
「よう、ケン。やっと来る気になったか」
やっぱりフユキも青い顔してる。
「やあ、朝からよく来てくれたね」
どこから来たのか、あの黒い服のおじさんがいつの間にか立っていた。そうしてすべり台のあるつきやまの裏手に回ると、
「さあ、ではいつものように目を閉じてください」
と、言った。慣れているふたりはすぐに目を閉じた。ぼくは二人のまねをしてあわてて目を閉じた。
「さあ、身体が浮いたようになりますよ」
たちまち、ふわ〜っといい気持ちになった。