君の夢買います
すると、ユウジは目を輝かせた。
「だろ? だから、ケン。おまえも枕もらえよ。ぜったいインチキじゃないからさ」
「それはいいけど、休んだいいわけ考えるのがたいへんだったんだぞ」
「そうか。悪かったな」
ユウジは少しも悪びれた風もなく、軽い調子で言った。
日曜日はさすがに練習に出てきたけど、なんだかユウジもフユキも上の空だった。
月曜日のぼくのクラスは、夢の録画の話で盛り上がり、昼休みには男子のほとんどがユウジを取り囲んだ。
「へえ、いいなあ。ぼくもその枕ほしいな」
「どうしたら、その博士にあえる?」
みんなの質問にユウジは得意そうに答えている。
「博士がこれはって決めた人材にこのチラシを配るんだ。それは助手の湯運具っておじさんがやってるんだけど」
そういいながらもったいつけて、あのチラシを見せた。
(あ、あいつ、捨てなかったんだな)
ぼくがにらむようにみたら、ユウジは決まり悪そうににやっとして、目をそらした。
「ほら、これさ」
みんなはそのチラシをまわし見して、感心したり、うらやましがったり、おどろいたりしている。ぼくはあきれて、自分の席にすわるとほおづえをついた。
その時、なにかいやな視線を感じて顔を上げた。きょろきょろとあたりを見回すと、廊下側の一番前の席にいるカズマが目に入った。
ぼくの視線にきづいたカズマは、唇のはしをゆがめていやな笑いをすると、持っていた本で顔を隠した。
(あいつ……)
カズマはイスに横ずわりして、本を読むふりをしながら、教室のようすをうかがっているようだった。友だちもいないから、いつもそんな感じだけど、不愉快だな。
ぼくは思いたって、教室の後ろのドアから廊下に出ると、前のドアからまた教室に入ってそうっとカズマに近づいた。
「何の本、読んでるの?」
うしろからふいに声をかけたので、カズマはびっくりして、あわてて本を閉じた。でも、のぞき込んだぼくもびっくりしたんだ。だって、むずかしい本にマンガをはさんでいたんだもん。
それも、今アニメでも一番人気の『鋼鉄の武装錬金術師』だ。いつかぼくたちがその話をしていたら、くだらないってバカにしたのにだ。
「な、なんだよ、いきなり」
カズマはぼくの方に向き直ると、メガネをあげながら口をとがらした。