君の夢買います
ふたりは興奮してしゃべり続けた。最初の日だから、その場で夢を録画する枕の威力を試してみるようにといわれて、部屋の中にあったベッドに寝たんだそうだ。
「お昼ごろ目が覚めてさ。博士がこの枕に録画されたおれの夢を再生して見せてくれたんだ」
「うん。ユウジの夢、おもしろかったよな」
フユキは思い出し笑いしている。
「へえ、すごいね。夢の録画とか再生って、どうやるんだい?」
インチキくさいけど、せっかくおもしろがっているから、調子を合わせて聞いてみた。
「まず、この枕で寝るんだ。これはハイテク技術を駆使して作られたから、頭をのせているだけでスイッチが入るんだ。それで夢を見始めたら自動的に録画するってわけ」
ぼくはユウジが得意そうに差し出した枕を手にとって、上にかざしてみたり、裏返してみたりした。うすくて平べったくて、まん中がへこんでいるバクの形をしたそれは、どう見たって赤ん坊用の枕だ。
なんでこんなモンがハイテクなんだ?
思わずつっこみたくなったけど、ユウジとフユキのうれしそうな顔を見たら、それこそ夢をこわすみたいだからだまっていた。
「ユウジ。ほら、お前の夢、けっさくだったじゃないか、ケンに教えてやろうよ」
「うん、そうだな」
フユキに言われたユウジは、鼻をふくらませて話し始めた。
「それがさぁ、おれ、鋼鉄の勇者になってさ。こう、手をかざすだけで武器が現われて、怪物をやっつけたりしてさ。そのうち急にサムライなんかになって、これがまたかっこいいんだよ。悪いやつをばったばったとなぎたおしちゃって……」
ユウジは勇者が手をかざして武器を取り出すポーズをとったり、チャンバラのなんとか流剣法のまねをしたり、オーバーなアクションをして見せた。
ユウジの夢の話は、マンガやゲームのキャラクターになりきったもので、いつも、学校でみんなに話しているのと同じような内容だ。とすると、本当に夢を録画した? まさか!
「最後はお母さんに叱られて、トホホだったけどね」
「ほんとほんと。落ちがついてたんだよな」
フユキがさもおかしそうに、また笑った。
「おい、ケン。聞いてるのか?」
ぼくが笑いもせず、だまっているので、ユウジは大きな声を出した。
「あ、ああ。面白いよ。おまえがいつも見てる夢だよな。確かに」