君の夢買います
わざとらしい言い方で、ゆっくり歩き出した。ユウジはフユキの背中とぼくの顔とを見比べていたかと思うと、とつぜんフユキを追いかけて走り出した。
「お、おれも行くよ」
「ユウジ!」
ぼくはびっくりした。そりゃあ、ユウジが乗りやすいたちなのは知ってるけど、もう気が変わったのか? あんなにびびってたのに。
あっけにとられるぼくをしりめに、ユウジはフユキと一緒に話ながら教室にいってしまった。ぼくはなんだかいやな予感がしたけど、それ以上反対することもできなかった。
土曜日、朝八時にユウジを誘いに行ったら、おばさんが出てきた。
「ごめんなさいね。ケンちゃん。なんだかうまくできないところを、フユキ君に特訓してもらうから先に行ってるって」
ユウジのやつ。ぼくに反対されると思って、先に出たんだな。
急いで学校に行ったら、案の定、ユウジとフユキは来ていなかった。
仕方なく、ユウジは風邪をひいたと先生にうそをついた。フユキのことは同じ地区のやつがやっぱりぼくと同じうそをついていた。
三時に練習が終わって帰る途中、公園をのぞいてみたら、小さい子どもが何人か遊んでいた。そばにお母さんたちがおしゃべりしている。何も変わりもない、いつもの光景だ。
もしかしたら、ユウジとフユキはおじさんのところじゃなくて、別のところで本当に特訓してるんじゃないか、と思いはじめた時、
「よう、おつかれ!」
ユウジがぽんと肩を叩いた。
「ユ、ユウジ」
そばにはフユキもいて、ふたりはずいぶんハイテンションだった。
「おれたち、ほんとに夢を売ってきたよ。な、フユキ」
そういって二人はぼくの前に手をつきだし、同時に指をぱっと開いた。そこには百円玉が銀色に光っているじゃないか。
びっくりしているぼくにおかまいなしに、ユウジは勝手にしゃべり出した。
「夕べあんまり寝ないでさ、朝早くここに来たんだ」
「おれも!」
合いの手をいれるみたいフユキが口をはさんだ。
「でさ、風呂糸博士にあったんだよ。なっ」
「うん」
「そこの空き地から博士の研究所に行って、この枕で寝たんだよ」
「そうそう。これがすごいんだ。なんたって夢を録画しちゃうんだから」