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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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君の夢買います

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「やだ。ちゃんとむこうで食べなさいよ」
「いいじゃん。これ見たいんだもん」
「ふんだ。わたしがテレビつけなきゃ、忘れてたくせにぃ」
 毎週水曜日の六時半に欠かさずみているアニメが、この『鋼鉄の武装錬金術師』。姉ちゃんも好きだから忘れずにすんだ。毎週いろんな錬金術を使って、悪い敵をたおしていくのが面白いんだ。最近発売されたゲームもすごい人気で、並んでやっと買えたのはラッキーだったくらいだ。
「この子、あんたの同級生の、ほら、カズマって子? あの子に似てるわ」
 姉ちゃんが指さしたのは、敵のキャラクター。子どもなんだけど、すごく頭がよくて、次々と怪人を作りだして主人公の行く手の邪魔をするんだ。
 そいつは黒ぶちのまんまる眼鏡をかけて、いつも人を見下したような態度で不敵に笑うんだ。姉ちゃんの言うとおり、ぼくの同級生のカズマに似ている。見かけだけじゃなく、頭がいいとこもいんけんなところもだ。
 そうそう、このゲームを買うのに並んでいたら、カズマが通りかかって、ぼくに聞こえよがしに言ったんだ。
『そんなものにばっかりむちゅうになるからバカになるんだ』
 ほんとにむかつくやつで、なにかにつけつっかかってくる。マンガを読んでいたら、頭のレベルが低いとか、サッカー部の練習に行こうとしたら、運動しか能がないとか言うし。
 べつにぼくたちがあいつに何かいじわるしたのでもないのに、だ。休み時間でもむずかしい本を読んだり、計算ドリルをやったりしてさ。もしぼくたちが、ガリ勉だの、勉強しか能がないって言ったら、怒るだろうに。
 おっと、カズマのことなんかいいんだ。今はこのアニメ。もうすぐ最終回だから、ちょっとも見過ごせない。
 先週はこのキャラが影のボスだったってわかってびっくりしたんだもん。
これから主人公と一騎打ちになるはずなんだ。
「いやあん。いいとこなのにぃ」
 姉ちゃんが奇声を上げた。主人公がピンチになった所で「つづく」だ。もう三十分がすぎちゃった。ぼくはさめたご飯を一気にかきこむと、食器を片づけた。
 
 宿題をやろうと、ランドセルからノートをだそうとしたら、あの紙が出てきた。
「おかしいな。いれたつもりないのに」
作品名:君の夢買います 作家名:せき あゆみ