君の夢買います
ユウジとフユキは再生されたお互いの夢を見てげらげら笑っていた。でも、ぼくは笑えなかった。だってぼくには本当のことがわかったから。
「おい、ケン。なんで笑わないんだよ。面白くないのか?」
「うん。だってぼくには見えないもん。そのモニター、ただのダンボールの箱だよ。それにここは、研究所なんかじゃない」
「え?」
目をまん丸くするふたりの後ろで、博士の顔が見る間に青ざめていった。
あのおじさんは催眠術でユウジとフユキを操っていたんだ。ふたりは公園から空き地の隅に建っている、このプレハブの小屋に連れてこられたんだ。
この小屋は、ここいらを整備しているときの作業員の休憩所として使われていたものだ。
今は誰も使わなくなっていて、壊れたドアから誰でも入れるから、ぼくらもときどき遊んだりしている。中は壊れた椅子や机がちらかっていて、かべの棚にはダンボール箱が置いてある。
ユウジとフユキや他の仲間は、おじさんと博士の催眠術で、実際にはない機械があるように思わされていたんだ。枕はいつか姉ちゃんが言ったようにただの赤ちゃん用の枕だ。
トオルにいわれた通り、ぼくは催眠術にかかったふりをして、薄目を開けて二人の後をついてきただけだった。
「ふたりとも目を覚ませよ。ここはいつも遊んでいる空き地の小屋だよ」
そこへトオルが入ってきた。
「その通り。さあ、インチキ博士。正体を見せろ」
でも、ユウジもフユキもまだ気がつかないらしく、うろたえている。
「なんだよ。トオルまで。いったいどうやってここに来たんだ」
その時、博士が逃げ出そうとして入口のほうに走り出した。
「おっと、通さないわよ」
入口では姉ちゃんが通せんぼした。博士は姉ちゃんに体当たりしようとしたけど、すかさずトオルがつかまえた。
「さあ、正体をあばいてやる!」
変装をとったとたん、ぼくたちは「あっ」と声を上げ、しばらくの間かたまってしまった。
博士の正体は、なんと、カズマだった。
トオルに押さえつけられたカズマは、やっぱり少しの間、身体をこわばらせて縮こまっていたけど、
「うわー」
と、大声をあげてあばれだした。でも、その声でわれに返ったぼくたちも、逃げられないようにカズマをおさえこんだ。