君の夢買います
ユウジがぼくとフユキに同意を求めてきたけど、トオルは落ち着いて言った。
「でも、変装すれば?」
「あ、そうか」
そういえば、あのおじさんも博士も背の高さはぼくたちくらいだった。
「とにかく、今度の土曜日の練習は休みになったから、その夢研究所とやらに行ってみよう」
家に帰って、玄関を開けたとたん、姉ちゃんが、まるで待ってましたといわんばかりに飛び出してきた。
「ねえ、ケン。今さっきね、わたし見たのよ。あの子を」
「あの子って?」
「ほら、あのアニメの悪役に似てる子よ」
「カズマ?」
「そうそう、その子!」
姉ちゃんは早口で、その時のようすを聞かせてくれた。
たまたま姉ちゃんも学校からの帰りで、あわてたようなカズマが走って姉ちゃんを追い越していったそうだ。ランドセルが空いていて、そこから何枚かの紙がおちたて、姉ちゃんが「プリントが落ちたわよ」と声をかけると、急いで拾い集めて、また走っていったらしい。
「それで、あの子、これをいっぱいもってたのよ」
カズマが拾いそびれたプリントを姉ちゃんがぼくに見せた。
「あ、これ!」
例のチラシだった!
やっぱりそうだ。教室でみんなのランドセルにチラシを入れた犯人はカズマにちがいない。ぼくはトオルに電話をして、姉ちゃんから聞いたことを全部話した。
「なあ、トオル。もし、カズマがこのことに関係しているとすると、あいつはなんでこんなことするのかな」
すると、トオルは少し考えてから話し出した。
「ぼくは、あいつと幼稚園の頃からいっしょだったけど、いつのまにかあいつは勉強ばっかりするようになっちゃって、遊ばなくなっちゃったんだ」
「ふうん」
「漫画なんか好きで、絵もうまかったな。小柄だけど、かけっこも速かったし、これでもいっしょにサッカーもしたことあるんだぜ」
ぼくは、昨日のカズマを思い出した。どうりでボールさばきが板に付いているはずだ。
ぼくがカズマと同じクラスになったのは去年、5年生のクラス替えからだ。それまではカズマは全く目立たなかったから、よく知らなかったんだ。
トオルは話を続けた。
「あいつ、3年生のおわりごろからすごく変わっちゃって、勉強ばっかりするようになっちゃったんだ」