君の夢買います
「このごろあの二人、おかしいじゃないか。土曜日は決まって練習を休むし、いつもの練習にも身が入らないし。レギュラーがふたりもあんなふうじゃ、来月の試合だってろくに戦えない」
「トオル。手を貸してくれないか。二人を助けたいんだ」
ぼくは二人が夢を売りにいったことや、ぼくも一度研究所に行ったけど、その時はインチキをあばけなかったことをことこまかく話した。てっきり、ばかばかしいと鼻で笑われると思ったけど、トオルはまじめに話を聞いてくれた。
「そうか。そういえば、話してたよな。まさか、ほんとうにいってたなんて」
「ごめん、すぐにトオルに相談すればよかったのに……」
「いや、キャプテンのくせに今まで放っておいたぼくが悪いんだ。先生にたのんで今度の土曜日だけ、練習を休みにしてもらおう」
こうしてトオルがいっしょうけんめい先生にたのんでくれたおかげで、一日だけ休みをもらうことができた。
その日、練習が終わって、みんなでランドセルをとりに教室にもどったときだ。後ろのドアを開けた時、前のドアからあわてて飛び出していったやつがいた。
もう、ぼくたちサッカー部員くらいしか学校に残っていない時間なのに、だれだろう。薄暗くなった校内では、たしかめることはできなかった。
「だれだ? あいつ」
「さあ、忘れ物でもしたんだろ」
ぼくもみんなも、その時は気にもとめずに、自分の席にいってランドセルに手をかけた。
「あれ?」
ちゃんと閉めてあったのに、ランドセルが空いている。
「おかしいな」
ほかのやつも首をかしげていた。ぼくのばかりじゃない。みんなのランドセルも空いていたんだ。
「おい、電気つけてみようぜ。どろぼうかも。なんかとられてるといけない」
ユウジが電気をつけた。すると、明るくなった教室内にみんなの奇声があがった。
「うわっ、なんだこれ」
『きみの夢、買います』
あのチラシが、あいたランドセルからはみ出していたんだ。
ぼくたちの声を聞きつけて、となりのクラスからトオルやフユキがとんできた。
「これか?」
トオルはチラシをじっと見つめていたかと思うと、意外なことをいいだした。
「これ、このクラスの誰かがそいつのなかまなのかもな」
「ええ?」
一番びっくりしたのはユウジとフユキだ。
「で、でも、大人だったよ。なあ」