君の夢買います
でも、これではインチキの証明にはならない。むしろ、ねぞうが悪いと録画できないなんて聞かされると、ほんとうのことのようにも思えてくる。
今日のところはぼくの完敗だった。ぼくは家に帰ると、姉ちゃんに報告した。
「そう。じゃあ、この枕のなかには確かにスイッチはあるのね。うさんくさいなあ」
姉ちゃんはベッドに枕をぽんと投げた。
それにしても、あのおじさんはいったいどこから現われて、どうやってぼくたちをあの研究所に連れて行ったんだろう。目を閉じている間に移動するなんて……。
テレポーテーション? そんな、まさか。普通の人間にできるはずがない。ぼくはそのへんからさぐってみることにして、今までのことを整理してみた。
まず、おじさんが現われる時間が夕方か早朝だということ、今までチラシをもらったのはサッカー部の連中だけ。それもぼくも含めた六年生九人ほどだ。
なぜか、キャプテンのトオルだけはチラシどころか、おじさんにも会ったことがない。
すんでいる地区のせいかもしれないと思ったけど、フユキは商店街のど真ん中、肉屋の息子だから、おじさんが現われたのは人通りの少ない地区とは限らない。
チラシをもらって実際に夢を売りに行ったのは五人。フユキとユウジは毎週、他の三人は今のところ一回だけだ。
それにしても、身体が重たくなったような気がしてだるい。その日は早く寝てしまった。
そんなある日の日曜日。たまたま先生の都合で練習が早く終わった。公園のそばを通りかかったとき、ぼくは意外なものを目にした。
小さい子が何人かあつまって、サッカーをしていた。でも、よく見るとカズマがいるじゃないか。塾の時間なのにどうしたんだろう。
ぼくは目を疑った。あのカズマが、こどもたちとサッカーをしているなんて。
しばらくすると、カズマはぼくの視線に気づいて、
「あ、みんな、悪いな。また今度」
と、ベンチに置いたカバンを手にして、そそくさと反対側の出口からいってしまった。
カズマの意外な面を見て、ぼくはまるできつねにつままれたような気持ちになった。
「ケン。ちょっと」
月曜日、放課後の練習前、トオルに体育館の裏に呼び出された。
「おまえ、どう思う? ユウジとフユキのこと」
トオルもとうとうがまんできなくなったようだ。