小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

人間屑シリーズ

INDEX|93ページ/120ページ|

次のページ前のページ
 

         *

 ミカと一緒に過ごすようになってから三日が過ぎた。
 私とミカは瞬く間に距離を縮めていった。
 私達はお互いに同じような傷を持っていて、そして同じように世界を儚んでいたから。

 ミカが契約を交わしてから四日目となる今日も、私はミカと会っていた。
 二人で何の目的も無く、ただぶらぶらと街を歩いているとふいにミカが口を開いた。
「私ね、一千万で命を売っちゃったんだ」
 私はその言葉に歩みを止めた。
「ほら、最近よく聞くでしょ? 一千万で殺害されてみませんかっていうメールが届いて〜ってやつ」
 ミカも歩みを止めて続ける。
「あれに私、返信しちゃった。殺して下さいって」
 私はただ押し黙っていた。
 その私の態度をミカがどのように受け止めたのかは、私には与り知らぬ所だったけれど。それでも彼女は少しばかり辛そうな顔をして言葉を紡いだ。
「あのさ、最初に公園で会った夜があったじゃない? あの日、私は公園に契約書を持っていってたんだ。そう指定されてたから」
「ミカは死んじゃうの?」
 全部知っているクセに私は聞いた。自分のわざとらしさに少しばかりの苛立ちを覚える。
「うん。あと三日位で死んじゃうよ」
 ミカはそう言って自嘲気味に微笑んだ。
「イヤ」
 ミカの手を取り私は言う。
「ミカが死ぬなんてイヤ。せっかく友達になれたのに。私はミカともっと過ごしたい。ミカと話したい。ミカが死ぬなんて絶対にイヤ!」
 馬鹿みたい。これじゃあただのダダっ子だ。それに彼女を殺そうとしている組織は……その中心は私なのに。
 ……ううん、違う。違う。これでいいんだ。私は彼女を生かして、そこから突き落とすのが目的なんだから。その為の“友達ごっこ”なんだから。
「……でも、死んじゃうんだ」
 ミカがボソリと呟いた。
「ダメ、死んじゃダメ」
「でもどうしようもないよ、契約しちゃったから。あのメールが本物なら、それまでだよ」
「契約なんて破棄すればいいじゃん! キャンセル位出来るでしょ? だって人の命がかかっているんだよ!」
 全部知ってるくせに、嫌な女。自分自身に吐き気がした。なんでこんなに不快なんだろう。今までだって何度も何度もしてきた事なのに。
「……出来るかな?」
「出来るよ……多分」
「……そうだね。聞いてみる」
 ミカはそう言うと携帯を取り出し、メールを打ち始めた。
 これでミカにメールを送った契約者は、そのマニュアル通りに彼女に指示を出すだろう。
 私とミカは返事が来るまでの間、ファミレスで待機する事にした。
作品名:人間屑シリーズ 作家名:有馬音文