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人間屑シリーズ

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          *

 ドリンクバーに何度ドリンクを汲みに行った事だろう。
 ファミレスに移動してからおよそ三時間後、やっと契約者からの返信が届いた。
 私は(そうか。他の契約者達はそれぞれの生活の中でこの行為を組み込んでる。だから私やクロみたいにすぐに返信なんて出来ないんだな)なんて事を考えながら、ミカの表情を注視した。
 ミカの目はメール本文を必死に追っていた。
「こんなの……」
 絶望的な声。死のうとしていたクセに。
 でもミカには生きる理由が無かった。仮初めの自分に疲れてた。だからってこんな簡単に死ぬのを止める位なら、最初からこんな事しなければいいのに。けれどでもああ……。 私の中で相反する二つの感情がくるくると回転しながらせめぎ合う。
 その二つの感情が何か、具体的な言葉は見つからない。愛か憎しみか、羨望か侮蔑か。それとも――
「……やるわ」
 私が自分の中の見えない感情に惑っている間にも、ミカは契約者とのメールをひっきりなしに続けていた。そして確固たる声でもって、今ミカは確かに言った。「やる」と。
 ミカは今、金銭的なやりとりの段階に入っているのだろう。未成年者に対する規約とその契約を、今頃クロが契約者に代わり遂行しているに違いない。
 私は何も知らない顔を作り、ミカに話しかける。
「どうだったの?」
「うん。死にたくなかったら、この街に隠されたスイッチを探し出さなきゃみたい」
「スイッチィ?」
 馬鹿っぽい声。それでもミカは何の疑いも抱かずに続ける。
「そう、スイッチ。そのスイッチの隠し場所のヒントを買うのに百万かかるんだって。それで見つけられなったら、死んだ時の一千万からその分の代金が引かれるんだってさ」
「そんな無茶苦茶じゃん! 警察は?」
「……ううん、ダメ。警察が本気にしてくれるか分からないし、もし冗談だと思われたらその間の時間が惜しいから」
 そこまで言うとミカは立ち上がった。
「ごめん、私は今から探しに行くね」
 そう行ってレジへと向かうミカの後をすぐに追う。
「待ってよ、私も一緒に探す」
「え?」
「だって私達、友達でしょ」
 私がそう言うとミカは一瞬驚いたような顔をして、その後すぐに天使のように微笑んで……微笑みながら言ったのだ。
「私、あなたと友達になれて本当に良かった」

 ファミレスを出た後、ミカは再びヒントを買った。
 しかしそのヒントが正解からはほど遠いものである事は、メールを見なくても分かる。
 ――そういうシステムだから。
 ミカはヒントに従って奔走し、私もそれに追従した。そこに救いが無い事など重々承知しているのに、必死の形相すら作りながら。
作品名:人間屑シリーズ 作家名:有馬音文