人間屑シリーズ
「あーあ。なんか冷めたわ」
彼女はそう言うとベッドに腰掛け、足をブラブラさせながら大きく伸びをするのでした。
私も着衣を直す事にしました。今のままでは余りにも間抜けが過ぎるというものです。
「聞いてもいいですか……?」
私は恐る恐る彼女に尋ねます。
「あー……何でこんな事してるかって事?」
彼女は心底面倒臭そうです。
「いや……その……あなたのような綺麗な子が……その……」
私がしどろもどろに言葉を発すると彼女は、にっこりとほほ笑みながら言うのです。
「私、自分の顔が大っ嫌い」
自分の耳を疑いました。何かの冗談でしょうか? こんなに綺麗な容姿を人が嫌いになれるでしょうか?
「オッサンさぁ、ハッキリ言ってブサいじゃん? 自分の顔、嫌いでしょ?」
昔は嫌いでした。しかし、今はもう慣れました。自分自身の容姿にも、それに対する世間にも。
「汚い顔も綺麗な顔も生きにくいのは同じだよ。同じ位、苦しいもんなの」
彼女は何を言わんとしているのでしょう。
「一番イイ思いが出来るのはフツーに可愛いとか、フツーにカッコイイ人。それ以上になると周りにたくさん気を使ってかないとダメ。それが疲れる」
確かに彼女の美しさは異常ともいえました。少なくともテレビに映る芸能人などとは一線を画す美しさがありました。
「そう……ですか……」
それで彼女は自分自身を蔑むために、このような行為を繰り返しているのでしょうか? だとすれば、それは余りにも悲しすぎます。もっとも、四十過ぎて定職の無い私が言えるような立場ではありませんが。
「本当に疲れてさぁ……。誰も本当の私を見てくれないとか思っちゃって。死んじゃおっかなーなんて思ってたの。そしたら」
そうしたらどうなるというのでしょう。
「そしたら、一千万の借金が出来た」
「いっ!」
思わず声が出てしまいました。
彼女はケラケラと笑っています。何かの冗談? そうですね、そうに違いありません。常識的に考えて、学生がそのような大金を借金出来るはずがないのです。
「学生さんに……そんな借金なんて……」
「でも契約書はバッチリぬかりなく出来あがってんだよねー。ハタチ過ぎたら一気に返済開始。利息も加速!」
そんな馬鹿な事があるでしょうか……?
「だから売ってんの。だって年を取れば取るほど、女の価値って下がるんだもん。高く買って貰えるウチに一気に稼いで、そんで返済しちゃいたい」
私は……騙されているのでしょうか? そうやって自身を売り物にする事を正当化させる為の、これは嘘なのではないでしょうか?
「だからさー、やっぱり買ってみない? 私の事」