人間屑シリーズ
そんな……嘘だろう……? あれは……あれはそういう意味だったのか……?
「ねぇ、不思議に思わなかった? なんで君の居場所がいつもバレてるのか」
先輩は俺の絶望を知りもしないで嗤う。
「私のGPS携帯でいつも情報は送られてたんだ」
なん……
「でも……でも先輩に連絡したのは俺の方ですよ!?」
泣いていた。惨めな位に泣いていた。それでも泣きながら言葉を吐いた。今出せる精一杯の大声で。
「あれにはビックリしたよー。契約メール送って、しばらくしたらこっちからコンタクト取ろうって思ってたのに、君の方から連絡があるんだもん」
嘘だろう……こんな……。
「全部……全部ウソだったって言うんですか!? 俺と過ごしてた時……先輩は……先輩は……っ!」
先輩は本当に……本当の……。
一歩、俺に近づくと先輩は今まで見た中で一番綺麗に笑った。
「君と過ごした三日間は、なんだか少し……本当に少しだけど、大昔に無くした感情が戻ってきたような気がしたよ」
そして先輩は唇を引き上げ綺麗に笑った。
「ホント、不快で仕方なかったよ」
あははははは! 先輩の嬌声が響き渡る。
そん……な……。
もう……もう嫌だ……。
「死にたい……」
自然と口から洩れた。白い少女がそんな俺を見て笑う。
「いやだなぁ、自殺する勇気も他殺される根性もないって判明したばっかりじゃないですか」
くすくすと少女が笑うと、彼女を中心に俺を囲む円の全てに笑いが走っていく。
あははははは! きゃはははは! はははははは! という嘲笑が鼓膜を支配する。
こいつらも……全員……契約者なんだな……。
「先輩……一つだけいいですか?」
笑い声の中、俺は先輩に尋ねる。
「ん?」
「俺を殺すつもりで選んだんですか?」
先輩は笑顔のままだ。
「違うよ。殺すつもりなら、足を見せたりしないよ。ハルトさんにも会わせないよ。」
俺は泣く。泣きながら尋ねる。
「どうして……ですか……?」
先輩はそっと俺の頭を撫でる。それは母親が子供にするように優しかった。
「自分より劣っている人間を見ると安心するでしょ? 自分より不幸な人間をみると勇気がわくでしょ? 自分はまだまだ大丈夫なんじゃないかって、誇りを取り戻せるでしょ? 私は……私は君に生きてほしかった。これだけは本当だよ」
頭を撫でながら先輩は笑い続ける、笑いながら言う。
「君を殺したいなら、再会した時に“私は幸せだ”って言ってたよ。その後も、君よりずっと優れた人に合わせ続けるよ。そうしたら……」
そうしたら俺は自分を屑として、自分自身の人生を捨ててたんだろうな。
俺を囲む契約者達が笑う。
白い少女も哂う。
先輩も嗤い続ける。
俺は……
俺も……