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人間屑シリーズ

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          *

“ワクワク☆海賊ランドエリア”の売店に入ると、早速レジの前で暇そうにしている店員を捉まえた。
「すみません、ここにライトになりそうな物ってありますか?」
 店員は小首を傾げながら、売店内を探し始める。
「ライト……ですか? うーん、あったかなぁー」
 しっかりしろよ! バカ店員! バイトか!? 苛立ちまぎれに店員を見ると、胸に付けられた名札に“新人”の文字が付いていた。クソが。俺は急いでるんだ!

 新人だけに任せるわけにもいかないので、俺も一緒に探しはじめた。
「ない……みたいですねぇ。うーん、パレードの時に一緒に振るような光るステッキなら入場門近くの売店にあると思うんですけど」
「そうですか。どうも」
 それをさっさと言えよ! 内心で悪態を吐いた。刻々と迫るタイムリミットに焦燥ばかりがつのっていく。
 罵倒したい気持ちを抑えて売店を飛び出し、入場門の方へと走る。……本当に走ってばっかだな、この三日は。

 息を切らしつつも、何とか入場門まで戻り売店へと入る。
 辺りを見渡すと光るステッキが、入り口からすぐの場所で売られていた。ステッキの先端にこの遊園地のマスコットキャラクターの“ウチュウくん”が付いていて、どうやらそのマスコット部分が光るらしかった。
 手に取り電源ボタンを押すと、ウィィンという鈍い音を立てながらウチュウくんは回転しながら光を放った。
 って光小っさ! こんなもんで暗がりが照らせるかっ。しかし売り物を見渡しても他に代わりになるような物もない。これだから地方遊園地は! 
 仕方がないのでカゴから一気に十本引き抜き、一斉に電源ボタンを押した。回転しながら発光する十体のウチュウくん。
 さすがに十体分の光はそれなりで、まぁこれなら何とかなりそうな雰囲気は醸し出していた。何より時間が無い。もうこれで行くしかない。

 十本のステッキを買い、再び“わくわく☆海賊大制圧”へと向かう。クソっ。一体俺はこの一週間でどんだけ散財したんだよ! もうマジで金ねぇぞ!

“わくわく☆海賊大制圧”に戻れた時刻は十二時十二分。ここからもう一度船をくまなく探す。早ければ八分、遅くとも九十六分後にはスイッチを発見出来ているはずだ。

 俺は十体のウチュウくんを光らせながら、乗船口へと進んだ。
 マニュアル通りの係員の女性は、明らかにマニュアルには無い顔で俺を出迎えた。
「もう一度お願いします。周回ごとに違う船に乗りますんで」
「……はぁ」
 女性は明らかに不審がりながらも、俺を紫の船に乗せた。

 今度こそ見つけ出してやる! 決意も新たに船に乗りこむなり探索を開始した。
 ウチュウくんを持ちながらの探索は中々はかどらないが、やはり明かりがあるというのは偉大で初めに乗船した時よりも細かい部分まで見る事が出来た。
 これなら見つけられるんじゃないか? やっぱりさっきは暗がりの中で見逃してしまっていたんだ。
 もう一度集中し、すみずみまで探す。
 ――しかし、スイッチは無かった。
作品名:人間屑シリーズ 作家名:有馬音文