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人間屑シリーズ

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          *

 遊園地の開園は午前九時からだった。
 平日の地方遊園地に開園から並ぶ人間はやはり少なかったが、それでも三十組ほどが既に列を作っていた。
 最後尾に並び、開園を待つ幸せな人々の談笑に紛れている間中、昨晩の警備員に気付かれやしないかとひやひやした。暗闇だったし恐らく顔は見られてはいないとは思うが、それでもやはり落ち着かないものがあった。

 ぱっぱかぱーー♪ ぱかぱぱーぱーぱー♪ ぱかぱぱーーーー♪
 悶々とした気持ちで項垂れていると、入場開始を現す陽気な音楽が流れはじめた。
 一斉に前進を始める幸せの列。俯いたまま入場門をくぐる俺。それでも頭は妙に冷静にスイッチのありかを考えていた。
 この遊園地で海が見えると言えば、入って西側にある“ワクワク☆海賊ランドエリア”だ。スイッチはおそらく海賊ランドエリアのどこかにあるに違いない。俺は西側へと歩みを進みながらメールを打つ。
『ヒントを買う。設置しているのはアトラクションか? レストランか? それとも展望スペースか?』
 例によって資金のやりとりをした後、メールが返ってくる。
『基本的にさぁ〜、そっちからの質問には答えないよ。つまんなくなっちゃうもんね。でも今朝は気分が良いから、特別に答えてあげよう☆ アトラクションに設置してあるよ』
 やった! 完全に絞れたぞ! 俺は思わず小さくガッツポーズをとった。なぜなら“ワクワク☆海賊ランドエリア”にあるアトラクションは一つしかない! 海賊になった気分で船に乗り、他の客の乗った船に向かって水鉄砲で攻撃をするという“わくわく☆海賊大制圧”だけだ。
 駆け足でアトラクションへと向かう。

         *

 アトラクション前に人気は無かった。
 開園直後、しかもこの真冬に水まみれになる物好きは少なくて当然だ。
 入場パスを係りの女性に見せ、アトラクション内部へと侵入する。

 中には船を手配する女性係員が一人いた。俺は彼女に声をかける。
「今日はどれ位の船が動いてるんですか?」
 このアトラクションの船は二人乗りで、同時に数隻の船がアトラクション内部に広がる“海”に出港するタイプだ。そしてそこでお互い仮想のドンパチを楽しむ。つまり今動いている船の数が、俺が探索する数でもある。
「本日は一バトル六隻で行って頂きます。本日は平日ですので二グループでの入れ替え制となっています」
 係員の女性は笑顔で応えた。
 つまりは六隻一組のグループが一周八分のアトラクションをこなし、一組目が帰ってきた所で二組目が発進するという手順だ。――となると俺が探さなければならない船の数は十二隻。一周八分だから単純計算で九十六分。そしてタイムリミットまでは八時間。楽勝じゃねぇか。
「そうですか、有難うございます。じゃあまず一周目お願いします」
「はい! 行ってらっしゃい!」
 係員の女性はにっこりと微笑むと、俺を赤い船へと導いた。

作品名:人間屑シリーズ 作家名:有馬音文