人間屑シリーズ
『ヒントを買う。街なんて漠然としたものじゃ見つけられるハズがない』
送信。
URLの書かれたメールを受信。手続きを済ませると、数分後メールが届く。
『ヒントです。あなたはスイッチを見つけられなければ銃殺です。やっぱりある程度のステージ性はあった方が盛り上がると思うんですよー。フツーの交差点とかで殺されてもつまらないでしょう? あんまり人が多い所もねぇ。こっちはプロのスナイパーでもないですしね。確実にあなただけを仕留めなきゃいけないんでー。そういった所に適した場所に、あなたには移って頂きたいものですね』
なんだコレ? コレが百万の価値のある情報かよ!?
「クソッ! なんだよコレ!」
先輩が横から携帯を覗き込む。
「人気の無い……所なのかしら」
「どうでしょう? でもステージ性とかって書いてありますし……。とにかく、もう一度ヒントを買います」
「大丈夫? もう三百万も使ってるのよ?」
「……先輩。俺、先輩と生きたいです」
携帯のディスプレイに目を落としたまま、俺は言った。
「うん」
先輩は小さく頷いてくれたみたいだった。
「だから俺、生き残れたら金は何とでもしてみせます」
「……うん」
先輩の目は見れなかった。見たら色んな物が揺らぎそうだった。
淡々と、ただ携帯だけに集中して再びヒントを購入する。
『そもそも「君の住む街」っていうのは、君の家から半径二十キロの範囲って思ってもらえればいいよ』
受信したメールにはそう書かれていた。
すぐさまPCを起動し、自宅付近の地図を検索し表示範囲を二十キロに変更する。
「この中にあのスイッチはあるはずです!」
「この中の、人気の無い場所……?」
「分かりません。けれど路上に転がっているとは考えられません」
先輩はモニターを真剣な眼差しで見つめると、ある一点を指でさした。
「ここの大きい公園、私はここを探してみるわ」
そう言うと俺の方に向き直り、毅然とした態度で言葉を紡いでくれる。
「二手に別れた方が可能性は高いわ。絶対、見つけよう」
先輩の大きな瞳に射られるような思いがした。泣きたくなる気持ちをグッと押さえるて、表示された地図をプリントアウトし一枚を先輩に渡した。
「先輩……恩にきます。もしまた新しいヒントを買ったら、すぐメールします」
「うん。じゃあ、私は行くね」
そう言うと先輩の唇が俺のそれに触れた。
「死ぬとか、諦めるとかはナシだからね!」
先輩は俺の手をギュッと握り閉めると、部屋を出て行った。先輩がアパートの階段を下りていくカンカンカンといった高い音が遠く響いた。
一人になった自室で俺は地図をもう一度睨み付けた。一体どこにある? ステージ性――人が多すぎない場所。ふとある一点に目がいった。高校生の頃よく行っていたライブハウス。もしかしたら……?
迷っている時間は無い。とにかく在りそうな所を片っ端から探すしか俺に残された道は無いのだから!
タイムリミットは最初に死の契約を交わした時間から七日後。つまり明日の午後五時三十分。
残り一日と七時間