人間屑シリーズ
終焉
私とクロはお互いの手を強く握りしめ合いながら、必死にアスファルトを蹴りあげ走る。
遠くでパトカーのサイレンの音が鳴り響いている。赤い光が私達を照らしだそうと、暗い世界で瞬いている。
どこへ?
どこへ逃げればいい?
私とクロを赦してくれる世界はどこにあるの? 世界の果てまで逃げたのなら、そこで私達は赦されるの?
ねえ、クロ。
私達、これで良かったのかな?
私達、やっぱり間違ってたのかな?
間違っているから、終りが来るのかな?
ねぇ、クロ。
私はあなたと、ただ生きたかっただけなのかもしれない。
ああ、また眩暈がしてきた。
世界が歪む。繋いだクロの手がぼんやりと霞んで見える。鼓膜の奥では高い金属音が耳鳴りとなって響き続けている。
それに何だか下腹部まで痛い。鋭利な痛みと鈍い痛みが交互に襲い掛かってくる。
どうしてこんな……こんな時に限って……こんな場合じゃないのに……。
グラグラとした世界の中で、それでも私は必死に走り続けた。
*
気が付くと、私達は私の通っていた学校の前にいた。
あんなにも嫌いな場所だったのに、なんでここに来てしまったんだろう。もう何か月も学校になんて来ていなかったのに。
私のちっぽけな脳みそでは、逃げる場所だなんていっても、世界の果てだなんて言っても、結局はこんなにも狭くて小さな答えしか導き出せない。
赤茶けた校門は私達を締め出すかのように、固く固く閉ざされている。
「行こう」
クロはそう言うと校門に足を掛け、それに乗り上がる。そして私に向って左手を差し出した。
「おいで、シロ」
私はクロの手を取り、校門によじ登った。そして二人で校内に侵入する。
「待ちなさい!」
遠く後ろの方から男の声で制止された。
ちらりと振り向くと、そこには見知らぬ数人の大人の男達がこちらに向かって駆けてきていた。
反射的に私とクロは駆け出す。
どこへ? どこへ行けばいい?
この大嫌いな場所で、私がいつも逃げていたのはあそこしかない。
――屋上へ。誰にも知られていない、私の秘密の場所へ。
校舎に駆け込み、息を切らせながら私達は階段を駆け上がる。
はぁっ、はぁっ、はぁっ。どちらのものとも分からない熱い息の音。苦しい。でも足を止めるわけにはいかない。
一階から四階まで一気に駆け上がると、やがてあの屋上へと続く鉄製の扉が見えてきた。
扉は相変わらず錆びついていて、力を込めて押すとギィっという音を立てながら、それは開いた。