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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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まりん

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 黒目がちのひとみをきらきらさせて、まりんは笑った。ふわふわの髪がわたがしみたいで、青いワンピースをきていた。
 それから、まりんはぼくの休みの日になるとやってきた。そして、一日中ぼくのそばで過ごした。

 不思議なことに、まりんの存在は少しもぼくの邪魔にならなかった。
 本を読んでいれば、そばで首をかしげながら聞いているし、ぼくがごろごろしていれば、歌を歌った。
 その歌声は、鈴を転がすと言う表現がぴったりなほど、綺麗な声だった。
 しかも、ぼくが仕事でへまをやって落ち込んでいる時には励ますように、うれしいときはいっしょに喜んでいるように、ぼくの気持ちにぴったりの歌を歌ってくれた。
 いつのまにか、まりんはぼくの妹のような存在になっていた。
 ぼくは、好きな人――もちろん君のことだけど――のことも、ごく自然にまりんに話した。
 まりんはそのたびに、
「その人も、きっとあなたのことが好きよ」
と、春のお日様のような笑顔を見せた。
  
 冬になっても、まりんは元気な笑顔でやってきた。
 ある寒い日。突然散歩に行こうという。
 ちょっとおっくうだったけど、ぼくはまりんとアパートを出た。
 公園から商店街を抜けたとき、ぼくはふと立ち止まった。このまままっすぐ行くか、角を曲がろうか、考えた。というのも、角を曲がると君の家があるから。
「どうしたの?」
 まりんがぼくの顔をのぞき込んだ。
「いや、別に。まっすぐ行こう」
 すると、まりんは何を思ったのか、いきなり走り出して角を曲がった。
「ま、まりん」
 ぼくは慌ててあとを追いかけたけど、角をまがったとたん、まりんの姿はまるで消えたように、見えなくなっていた。
「まりん。君はいったい……」
 ぼくがその場に立ちつくしていると、
「こんにちわ」
 君が目の前に立っていた。肩に青いボタンインコをのせて。
 それは、いつかケガをしたインコによく似ていた。
 インコはピイッと、甲高い声で鳴くと、ぼくの方に飛んできて、肩に止まった。
「まあ、まりん」
 君のその一声に、ぼくは驚いた。
「ま、まりんって言うんですか?」
「ええ、きれいな青い色でしょう。だから」
「外にでてきて、飛んでいったりしない?」
作品名:まりん 作家名:せき あゆみ