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製作に関する報告書

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という小役人のような人物であり、ですが、そのしわ寄せはいったい誰にいくのかということは考えない人でした。ですから、このような衝突にまったくといっていいほど無力でした。と、いうか、今になって思うことがあるのですが、市川氏は私と現場の柴田氏、あるいはチーフグラフィックの相澤氏をわざと噛み合わせ、漁夫の利を得ようとしていたのではないか、と。両方の勢力を競わせ傷を負わせて、自分の会社内での発言力を守ろうとする。発言力も何も、能力の無い人間がのしていけるほど状況は甘くはないと思うのですが。それはともかく、私は柴田氏たちと激突をしました。FDJの市川氏は、
 
『俺は知らない。おまえのほうでやれ』
 
と逃げ腰でしたから、私としては自分が矢面に立つしかなかったのです。果たして、私は、またもスタッフのことを見誤っていました。私は事実を述べ、ですから、それ以上に他意はなかったのです。ただ、本当に、
 
『そんなことをしていればまた潰れますよ』
 
と思って、そのことを申し上げただけでした。また、普通の人間であれば、耳の痛い話であっても、
 
『そうだな。我々も悪かった』
 
という反応を示すと思うのですが、5pb.のスタッフに関してはそういうことはありませんでした。特に反発を強めたのはグラフィックチーフである相澤こたろー氏でした。彼は、私が言った。
 
『社員が心をひとつにしないといい作品は生まれない』
 
という発言に対して、
 
『そんなの関係ねえ』
 
と喚いて私に噛み付いてきました。私はここで、元KIDの社員に関して言えば柴田太郎氏とディレクター松本氏だけではなく、この相澤という人物もまた癌であるのだと悟りました。
 
『俺だって三十七年積み上げてきたもんがあるんだよ』
 
とチーフグラフィックの相澤氏は不貞腐れて吐き捨てるようにして言っていましたが、私はこう思っておりました。
 
『三十七年積み上げて、まだそれか』
 
相澤氏は輿水氏とともに私に対して、名前の変更理由についても話してくださいました。彼の言うことはこうでした。
 
『主役ヒロインのありすについては、前作あすかとひらがな名でかぶる。さらにはアリスソフトのアリスとかぶるのでよろしくない』
 
私は思うのです。相澤氏はアリスソフトに何か負い目でもあるのか、と。何故他社の会社名とかぶるぐらいのことで思いを曲げるのか。しかも、これは後になって分かることですが、リリスというキャラのデザインは某社ライトノベルの主人公のパクリである。自分はパクる。けれど、他人がパクるのはよろしくない。二重基準は構いませんが、その基準が私には分からないですから、こちらとしては対処のしようもないのです。相澤こたろー氏については、掲示板で時折、
 
『トレスパクリ疑惑』
 
という書き込みが定期的に揚げられており、私もおかしなことであると思っていたのですが、そういう手合いであるから自分のパクリには寛容、であるのか。だとしたら、アリスソフトだけ別格というのはどういうことなのか。私には今もって相澤氏の考えていることが分かりません。
もっとも。名前に関しての変更について言えば無理をして、私が折れさえすれば修復ができない問題ではありませんでした。ただ、問題は、サイバーフロントで作られている、メモオフの携帯版のことです。FDJの市川氏は、
 
『サイバーフロントのシナリオは俺たちのほうで直させる』
 
というようなことを言い初め、これは私などとしてはとても危ういことでした。本当ににそうするだけの力が市川氏にあったかは存じませんが、そんなことをすれば、サイバーフロントの社員の皆さんの二度手間であり、仕事が増えることになる。私も、自分を大事にしてくださる人々のことに情が移りますし、そちらに利益を図りたいと思うのです。何かにつけて突っかかってくる愚かな人々を手助けをしたいとは思わない。二人の兄弟がいて、一人は孝行息子、もう一人はひねたチンピラでは、やはり、孝行な息子を大事にしたくなる。人間とはそういうものであります。ですから、
 
『どちらかの会社との関係を断たなければならないかもしれない』
 
と私はすでにその時から思っておりました。 
 
 8
 
さて、この会合は紛糾して終わりましたが、当然、これで全てが終わったというわけではありませんでした。翌日ですが、FDJの市川氏から連絡がありました。すなわち、
 
『グラフィックチーフの相澤こたろーがおまえの発言に腹を立てている。自分たちを無能呼ばわりしたのが気に入らない』
 
というものでした。まったく、市川和弘という男の血の巡りの悪さ、頭の悪さはどうしようもないことです。そういうことは市川氏が黙っておればよいことです。自分が黙って胸の中にしまっておけば、私もいらぬ気を遣わなくて済む。結果シナリオの作業もはかどる。実際、名前の変更は私としても、その場では『分かりました』と飲みましたが、おもしろくないものがありました。作業は、滞ります。そこにもってきて、
 
『おまえの発言に腹を立てている』
 
それを処理するのがチームリーダーである市川の役目なはずですが。私に現場の不満をリークして何か得になることがあったのですかね。いずれにせよ私としては受けて立つしかありません。私はFDJの市川氏に、
 
『分かりました、それでは、グラフィックチーフの相澤氏と連絡をとってください。私が直接、お会いして話します』
 
と申し上げました。そんなに腹を立てているのであれば、私ももう一度お会いしなければならない。ただ、腹を立てるのも結構ですが、私の言ったことには間違いはなかったはずでした。つまり、
 
『チーフグラフィックの相澤氏を含めてスタッフは、作品も会社も支えきれなかった』
 
それは事実であります。それとも、どこかにKIDという会社はまだ存続しているのか。だとすれば、何故、チーフグラフィックの相澤氏は5pb.にいるのか。私は、何度でも彼らに会って、そのことを言うつもりでした。私は彼らが無能であったとはその時は思っておらず、今でもそれぞれに技術があるのだろうと思っています。ただ、そうではなくて気構えの問題でした。
 
『道楽で仕事をしてくれるな』
 
そのことを私としてはどうしてもチーフグラフィックの相澤氏に伝えておきたかったのです。ですから、時期は大晦日前で、コミケの日でしたが、私はチーフグラフィックの相澤氏と面談したいと、FDJの市川氏に申し上げたのです。ちょうど、チーフグラフィックの相澤氏もコミケに5pb.の仕事できているということでしたから、私はコミケには参加しませんが会いに行ってもいいと、そう申し上げたのです。ですが、FDJの市川氏からの回答は、
 
『チーフグラフィックは、おまえの顔なんか見たくない、とそういうことだ』
 
というものでした。
 
『おまえになんか言われたくない、と、そうも言っていた』
 
ともFDJの市川和弘氏は気のふれた伝書鳩のように言っておりましたが、私に言わせれば、
 
『私だって好きで言ったわけではない』
 
といったところでした。
 
作品名:製作に関する報告書 作家名:黄支亮